専欄

毛沢東の妻、江青の「還原」 (1/2ページ)

荒井利明

 歴史的人物に毀誉褒貶(きよほうへん)はつきもので、それが権力闘争の「敗者」であれば、「勝者」によって実際以上に悪者として描かれるのが常である。そうした人物の一人が、毛沢東の妻で文化大革命中に活躍した江青である。毛沢東の死後、拘束され執行猶予付き死刑判決を受けた江青は大変な悪女とされてきたが、本当のところ、いったいどのような人物だったのだろうか。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 江青に仕えた秘書、看護師、ドライバー、ボディーガードらが彼女について語ったインタビューをまとめた「還原・一個真実的江青」が昨年夏、香港で刊行されており、なかなか読み応えがある。「還原」とは原状に戻すという意味で、勝者によってゆがめられた江青像を正そうという意図が込められている。

 江青について、一時期、「かつらをしている。バストとヒップは整形だ」「閣僚や俳優らと性的関係があった」などといった情報が氾濫した。だが、この本ではそれらはでっち上げだと完全に否定されている。

 ただ、インタビューに応じた者たちがほぼ異口同音に指摘しているのは、江青の度を越した疑心である。その疑心によってあらぬ疑いをかけられ、監獄や労働改造に送られた秘書や看護師らがおり、みな緊張して江青に仕えていたという。

 江青と実の娘、李訥との関係があまりよくなかったことも多くの者が指摘しており、二人が口げんかをしたとき、李訥が大声で、「あんたは武則天になりたいと思っているが、そんな能力はない」と叫んだのを看護師らは耳にしている。

 武則天は唐の時代に皇后から皇帝になった則天武后のことで、中国史上、唯一の女帝である。江青も最高指導者になりたかったようだが、娘に「能力がない」と言われては、立つ瀬がなかっただろう。

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