深い溝、デサント経営体制刷新が焦点 TOB成立

デサントと伊藤忠商事をめぐる動き
デサントと伊藤忠商事をめぐる動き【拡大】

 伊藤忠商事によるデサントに対する敵対的TOB(株式公開買い付け)が成立した。今後両社は協議に移り、デサントの石本雅敏社長の進退を含む経営体制の刷新が焦点となる。出資比率を増した伊藤忠が主導権を握ることになる一方、デサント側の反発は強く、主張の隔たりは埋まらない状態だ。協議が不調となれば、株主総会での役員選任案の可決に必要な過半数の票を握るための「委任状」争奪戦に発展する可能性もあり、対立の長期化は免れない。

 両社は月内にも協議を開始する予定だが、話し合いは難航しそうだ。すでにTOB開始後の2月、デサントの石本氏と伊藤忠の小関秀一専務執行役員が水面下で交渉を行い、4回にわたって取締役会の構成について話し合いを進めたものの、決裂した経緯がある。

 現在、デサントの取締役数は10人で構成される。それに対して伊藤忠は6人に減員して同社出身者の比率を高めることを提案。一方、デサントは5人に減らしてデサント出身1人を除く全員を社外にする案を出している。

 関係者によると「両社の幹部が同じテーブルについて歩み寄りも見えたが、結局、デサント社内で反発が強かった」という。また、交渉中に伊藤忠の批判をメディアを通じて行ったデサントに対して「石本氏の発言内容の信憑(しんぴょう)性に疑問を持たざるを得ない状況」と不信を深めた伊藤忠は2月28日に協議の打ち切りを公表。さらに交渉におけるデサントの対応から「経営体制には重大な問題が露呈している」とも指摘して、今後再開される協議が不調に終われば、定時株主総会を待たずに臨時株主総会の開催を要求し、石本氏を含めた経営陣の刷新を求めることも視野に入れる。

 一方でデサントの幹部の一人は「負け戦と言われることもあるが、デサントの企業価値を守るために引き下がるわけにはいかない」と語気を強め、大ヒット商品の「水沢ダウン」など、ブランド育成に強みを持つ独自の社風への矜持(きょうじ)を見せてきた。社内でも「石本氏ではこの局面を乗り切れない」との声も上がるようになってきているが、急速な変化や拡販を求める伊藤忠の経営介入を懸念し、敵対的TOBに対する反感はいまなお根強い。国内従業員の約9割がTOBに対する反対署名を行っている。

 伊藤忠は株保有率40%を確保した。臨時株主総会の開催となれば、役員選任案の可決に必要な過半数の票をめぐって委任状争奪戦に発展する可能性も十分にある。

 スポーツ用品メーカーにとって、関連需要が期待できる2020年の東京五輪を前に、長期化する対立はマイナスの影響になりかねない。岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリストも「TOBが成立したのを契機に、できるだけ早くこの問題を終結させることがデサント、伊藤忠にとってもメリットがあることだ。長期化すればブランド毀損(きそん)などダメージが広がる」と指摘している。