政府の経済政策 “外的”要因跳ね返せず

日銀=東京都中央区(早坂洋祐撮影)
日銀=東京都中央区(早坂洋祐撮影)【拡大】

 日本経済の変調を引き起こしつつあるのは、中国経済の減速という「外的要因」だ。政府・日本銀行はこれまで成長戦略や大規模な金融緩和策を打ち出してきたが、海外からの悪影響をはね返すだけの経済の“体力作り”には至っておらず、影響が長期化すれば、景気腰折れの現実味が増す可能性がある。

 平成24年12月に発足した安倍晋三政権がアベノミクス「三本の矢」の3本目として打ち出したのが成長戦略で、人工知能(AI) などによる「第4次産業革命」で経済成長を進めるとしてきた。

 しかし、経済の実力を示す「潜在成長率」は、政権発足時の0・8%から足元の1・0%へ、0・2ポイントしか高まっていない。特に潜在成長率を構成する3要素のうち、技術革新に左右される「全要素生産性」の伸び率は1・0%から0・2%へと悪化し、成長戦略が不発だったことを示した。

 内需の柱である個人消費も伸びておらず、30年10~12月期の個人消費額は年率換算で300兆円と、24年10~12月期の293兆円から2%しか増えなかった。

 一方、日銀も国債の大規模購入で市場に大量のお金を流す「異次元緩和」などを打ち出してきたが、企業の資金需要は高まっていない。東京商工リサーチによると、国内銀行114行の30年9月中間決算の預金残高に占める貸出残高の割合は66・02%で、中間期としては比較できる24年以降、最低に。預金が貸出金を上回った額は278兆円で最大となり、銀行の「金余り」が浮き彫りとなった。

 10月には消費税率10%への引き上げも控えている。景気刺激のための財政政策拡充を求める声が強まり、財政の健全性が一層悪化するリスクも高まりかねない。(山口暢彦)