消えゆく57番目の民族文化 若者戻らず漢族への同化進む

貴州省の村で刺繍をする●家人の女性たち(共同)●=にんべんに革
貴州省の村で刺繍をする●家人の女性たち(共同)●=にんべんに革【拡大】

 人口の9割以上を占める漢族と、55の少数民族が暮らすとされる中国で、いずれにも属さない「単独の民族」だと訴えるグループが多数存在する。中国古代神話に登場する弓の名手の子孫を名乗る南西部、貴州省の「●家(ガージャー)人」もその一つ。長老らは「57番目の民族認定」を切望するが、近代化の波にのまれて漢族への同化が進み、独自文化は失われつつある。

 黄金色のトウモロコシがつるされた軒先で、赤い飾りの小さな帽子を着けた年配の女性たちが刺繍(ししゅう)にいそしむ。貴州省黄平県の山あいの村。●家人の長老は「刺繍の模様も歌も他と違う。独立した民族だと早く認めてほしい」と語気を強めた。

 約6万人いるとみられる●家人は、独自の言葉を話すが文字は持たない。長老らによると、胡錦濤前国家主席が貴州省トップを務めていた1980年代ごろから当局に民族認定を訴えてきた。中国政府は不満を和らげるための措置として2003年、同省で発行される身分証に「●家人」と記載することを認めたものの、長老らの願いはかなえられていない。省当局は●家人の処遇は「国家機密」と口をつぐむ。

 中国政府が民族の識別に乗り出したのは1950年代。53年の国勢調査で民族名を住民に自己申告させたところ、400以上の名前が挙がった。そこで約30年かけて、言語や文化的特性などから最終的に56の民族に集約した。

 「穿青人」「蔡家人」「★人」。中国メディアなどによると、他にも単独民族だと主張するグループは多い。だが79年を最後に新たな少数民族は認定されておらず、ウイグル、チベット族など少数民族への抑圧姿勢を強める中国当局が「新たに57番目を認めることはない」(台湾の研究者)。

 「木造の伝統家屋はどこにでもあるコンクリート製に建て替わった。娯楽が増え、若者は祖先から伝わる歌や踊りを覚えようともしない」。民俗芸能に従事してきた●家人の男性は嘆く。

 貴州省の農村は貧困世帯が多く、若者らが都市部に出稼ぎに行かないと生活できない。男性は経済的自立を図るため、村の景観や文化を大切にしたエコツーリズムを地元政府に繰り返し訴えたが、当局者は視察旅行や上部機関の幹部の接待をしただけ。景観保存は実現せず「観光での村おこしは手遅れ」となった。

 働き手が出稼ぎに行った村には、年寄りと幼い子供が残る。昔は許されなかった漢族など他民族との結婚も自由になり、仕事のない村に若者はなかなか戻らない。男性は「民族認定どころか、文化の継承も危うい状況だ」とつぶやいた。(貴陽 共同)

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