専欄

「中国製造2025」は消えたか?

 今年の政府活動報告の中で、李克強首相がハイテク産業育成策「中国製造2025」に言及しなかったとして注目を浴びた。2015年に初めて同政策が登場してから、毎年必ず報告の中に盛り込んできただけに、やはり米国を刺激するのを避けたのかなと思った。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 ところが報告を子細に読んでみると、確かに「中国製造2025」という言葉は見当たらないが、製造強国に向けての各種施策はふんだんに盛り込まれており、むしろ昨年の報告よりも文字数は多いし、力の込め方も違う。

 報告では、「イノベーションによる発展の牽引(けんいん)を堅持し、新たな原動力を大きく育てる」の箇所で、製造強国について以下のように述べている。

 「今年度の施策として在来産業の改造・高度化を促す。製造業の質の高い発展・推進に主眼を置いて、工業の基盤と技術革新力を強化し、先進的製造業と現代サービス業の融合発展を促進し、製造強国の建設を加速させる。インダストリアル・インターネットのプラットフォームをつくり、『スマート・プラス』を開拓し、製造業の業態転換・高度化をパワーアップさせる」

 しかもその後段では、「基礎研究・応用基礎研究をいっそう支援し、独自のイノベーションを強化し、基盤技術・コア技術のブレークスルーにカを入れる」と強調している。米国から中核部品の海外依存体質を厳しく攻撃されたからであろう。

 もう一つ今回の全人代で注目されたのは、国家発展改革委員会の連維良・副主任が記者会見で、民間企業が国有企業に過半出資するのを認めると語ったことである。

 これまでも国有企業改革の一環として「混合所有制改革」を進め、国有企業への民間資本の導入を図ってきた。しかし民間企業の出資比率はほとんどが50%以下に抑えられていた。

 民間企業が過半を握ってもよいということになれば、製造強国の主体も変わってくる。アリババや華為技術(ファーウェイ)といった民間の新興企業が国有企業を買収し、経営権を握ることが可能になってくる。場合によっては、外資企業が中国の国有企業を買収するケースも出てこよう。

 中央指導部がここまでの決断をしたのは、やはり米中経済戦争の影響があろう。従来の国有企業重視の政策では、太刀打ちできないと悟ったのではないか。外圧によって中国内で遅れていた改革が一挙に進んでいく状況が生まれつつある。

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