【激動ヨーロッパ】「信頼できるAI」へ EU、ルール作りで主導狙う (2/3ページ)

地中海の島国マルタで人工知能(AI)を活用したロボットの開発にあたる研究者ら(2月8日、ロイター)。欧州では、AI技術で米中に後れを取っていることへの危機感も強い
地中海の島国マルタで人工知能(AI)を活用したロボットの開発にあたる研究者ら(2月8日、ロイター)。欧州では、AI技術で米中に後れを取っていることへの危機感も強い【拡大】

 指針案は「AIへの倫理的なアプローチは責任ある競争に重要」とし、「欧州を越えた枠組みの検討や議論を促すことを目指す」とも明記。EUの指針策定を、世界的なルール作りへの弾みにしたいとの意欲を明確に示した。

 日本も昨年12月、政府の専門家会議がAI活用に伴う7つの基本原則案をまとめた。6月には大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれることから、政府はAIのルール作りの議論を主導したい考えといわれる。

 「人間中心」などEUの指針案と日本の基本原則案には重なる部分も目立つ。アンシプ氏は「志を同じくする国々が合意すれば、国際的な取り組みに貢献できるだろう」ともしており、日欧の連携の可否も注目されそうだ。

 米中に利益の7割

 EUがルール作りに尽力する背景には、AI開発をめぐる競争で、米国と中国に大きく引き離されていることへの危機感もある。AI開発には膨大なデータが不可欠で、国内に大手IT企業を擁する米中に有利だ。

 大手会計事務所プライスウオーターハウスクーパース(PwC)の分析によると、AIが2030年までにもたらす利益は世界で15兆7000億ドル(約1740兆円)に上る。だが、このうち約70%は米国を含む北米と中国に集中し、欧州は15%余りにとどまるとした。

 個人情報保護のため昨年施行したGDPRなどと同様、EUにはルールの国際標準化を図れば、域内産業の育成に寄与するとの狙いもあるとみられる。ただ、「倫理手段をテコにしても競争力強化にほとんど影響はない」(在ブリュッセルの専門家、エリーヌ・シボ氏)との見方から、AI投資の拡大を求める意見も強い。

AI投資、地域に格差