高論卓説

中国・未来都市の実験特区「雄安新区」とは (2/2ページ)

 近年、北京は首都としての役割を強調しながら、政治、文化、国際交流、科学技術・イノベーションという4つの軸を中心に都市機能を整備しようとしている。これらの機能以外は北京の市外に移転させる考えで、河北省はその受け皿として位置づけられている。これまで河北省は鉄鋼工場や洋服の卸売市場などローエンド産業を中心に受け入れてきたが、北京の都市病問題を根本的に解決できなかった。北京には各種の優れたリソースが集まり、華北地域における北京一極集中が進んでいる。雄安新区の設置を契機に、北京にある国有企業や大学、研究機関、総合病院などについて意図的に移転や拠点開設を行う。

 ただ、雄安新区は北京からのハイエンド産業移転の集積地にとどまらず、最先端のテクノロジーの活用を積極的に行い、高い競争力や利便性、効率性を備えた未来都市の実験特区としての存在感を高めている。既に国内外のマスコミに取り上げられているが、雄安新区では自動運転車の走行や、無人スーパー、顔認証によるホテルの手続きなど、多くの新しい取り組みが行われている。

 国家主導でインフラ建設やリソースの移転が推し進められている雄安新区だが、深センの成功を再現するためにはより多くの人材を集めることができるかが重要な鍵となる。中国には「用足投票」という言葉があるが、これは人口流動や企業進出の動きがその地域の発展状況を示すという意味だ。中国全土で都市間の人材争奪が激しさを増している中で、雄安新区がどのように自らの魅力をアピールするか注目したい。

【プロフィル】趙●琳

 チョウ・イーリン 富士通総研経済研究所上級研究員。2008年東工大院社会理工学研究科修了、博士(学術)。早大商学学術院総合研究所を経て、12年から現職。麗澤大オープンカレッジ講師なども兼任。中国遼寧省出身。

(●=偉のにんべんを王に)

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