【経済講座】電力自由化から3年、「安定供給」の課題浮き彫りに (2/3ページ)

昨年12月の東京ガスの新CM発表会。同社は電力の小売りで攻勢に出ている(同社提供)
昨年12月の東京ガスの新CM発表会。同社は電力の小売りで攻勢に出ている(同社提供)【拡大】

  • 関西電力の舞鶴発電所(同社提供)

 特に需要を抱える大都市圏ではその動きは顕著だ。昨年11月時点の切り替え率は中部電力が30.2%と3割を超え、関西電力で28.2%、東京電力も24.3%となった。大手ガス会社などが電力とガスをセット販売し、従来より5%程度安い料金で大手電力から利用者を奪う構図が定着している。

 地方圏でも中国電力や九州電力、四国電力、北海道電力で10%以上の切り替え率を記録している。やはり地元のガス会社を中心に電力市場に攻勢をかける動きが激化しており、利用者の選択肢は着実に広がっている。

 しかし、決して手放しでは喜べない。昨年9月に北海道電力の苫東厚真発電所が地震で被災し、稼働停止に追い込まれた。これに伴って北海道全域がブラックアウトに陥り、地域の暮らしや産業を直撃した。北電はその後、液化天然ガス(LNG)発電所の新設で供給力を増強したが、自由化に潜むマイナス面の影響にも注意が必要だ。

 電力自由化は大手電力の地域独占を崩し、新規参入を増やす狙いがある。同時に発電コストを電気料金に上乗せする総括原価も廃止された。競争が激化すれば、大手電力は経営効率を優先して余分な電源を保有しなくなる。稼働率の低い電源があると発電コストが上昇するからだ。老朽火力の廃止も相次いでいる。

 大手電力幹部は「これまでは地域独占と総括原価によって、安心して電源に投資できた。その前提がなくなった以上、従来のような安定供給がいつまで可能かは分からない」と冷めた見方を示す。安い電力ばかりを求める動きが広がれば、その分だけ供給安定性は失われる。

自由化と安定供給は本来、相反する