「実証より理論」は時代遅れ マンキュー経済学、見直し迫られる (2/2ページ)

ハーバード大学でのイベントで、イエレンFRB議長(右)=当時=と対談するグレゴリー・マンキュー氏=2016年5月27日、米マサチューセッツ州(ブルームバーグ)
ハーバード大学でのイベントで、イエレンFRB議長(右)=当時=と対談するグレゴリー・マンキュー氏=2016年5月27日、米マサチューセッツ州(ブルームバーグ)【拡大】

需給関係論にも欠陥

 他方で、経済学教育に対するマンキュー氏のアプローチには、データよりも理論に頼り過ぎるという、もっと微妙な問題があるかもしれない。マンキュー氏の教科書では、需給関係を至上なものとして、数学モデルと論理が目を引く。しかし、最先端の経済研究の世界においては、実証分析が演繹(えんえき)的な理論構築に取って代わっている。

 至上とされる需給関係の理論でさえ、データに照らせば大きな欠陥が見つかる。これは特に労働市場に当てはまる。

 別の言い方をすれば、最初に証拠を見た上で、観察結果を説明するために理論を活用とする分野である自然科学のように経済学はなりつつある。理想的には、経済学教育もこうしたシフトに遅れないよう変化すべきだ。物理学専攻の学生が入門クラスで実験コースがあるのと同じように、経済学専攻の学生も最初に統計学的手法を学ぶようにする必要がある。そうすれば、自分たちの学ぶ理論が政治的な理由のためにでっち上げられたものでなく、実際に観察された現実を反映するものだと自信を深めることになるだろう。ビジネスの世界で非常に有益となるであろうデータ分析やプログラミングのスキルも身に付けてもらえる。

 実証研究に重点を置く教材の一つはCOREプロジェクトだ。エコノミストらによるオープンソースの国際的取り組みである同プロジェクトは、マンキュー氏の教科書で示される超然とした見識よりも、経済に関するもっと融合的なビジョンを提供し、実践的なデータ分析に一層重点を置くとともに、教科書が無料であるという利点もある。

 19世紀の古典的理論、データや証拠よりも論理と哲学を重視するスタンス、1970年代のリバタリアン的常識は全て時代遅れと映りつつある。研究の在り方が変われば、それを学生に提示する「顔」も変化しなければならない。その結果、経済学教育は確実性を主張する部分がずっと減るが、不確実性それ自体に見識があるのだ。(ブルームバーグ Noah Smith)

 (ノア・スミス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の准教授です。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)