海外情勢

蒸気を動力に製造、伊のエコビール 元地熱発電所の技師が挑戦

 60代のエド・ボルピ氏は、仕事と趣味を一体化させるすべをようやく見つけた。発電所の技師だった同氏は、クラフトビールブームに沸くイタリアでビール造りに乗り出した。しかもそれは蒸気だけを動力に製造するビールだ。

 ボルピ氏は伊電力大手エネルが国内中部に有する地熱発電所で働いた33年間、トスカーナ州ラルデレロの自宅の居間で冷たい缶ビールを片手に一日の疲れを癒やしていたものだった。趣味として裏庭で造っている自家製ビールを飲めば、満足感はさらに高まった。

 2013年までにボルピ氏は、エネルの発電所でタービンを回していたのと同じ地熱蒸気を用いて、排出物ゼロのビールを自宅で醸造するようになっていた。そこは地熱井から噴出する蒸気にちなんで命名された「悪魔の谷」を見下ろす丘陵地にあり、ダンテが「神曲 地獄篇」の構想を得たとされる場所でもある。

 そして現在、ボルピ氏は蒸気ビールを意味する「ヴァポーリ・ディ・ビラ」という醸造所を経営している。このビールで世界市場への進出を狙うとともに、トスカーナのエコツーリズム推進に一役買いたいと考えている。

 同醸造所は18年に初めて海外委託販売を行い、(香辛料の)チリやクリの風味など全8種のビール1600本を米カリフォルニアに出荷した。ボルピ氏によればこれはほんの始まりにすぎない。18年は約4万本を製造しており、「私たちは毎年、生産量を倍増させている。地熱の利用は省エネになるだけでなく、この地域の生活の質を高めることにもつながる」と同氏は語った。

 トスカーナは地熱資源に恵まれ、同地の地熱発電の歴史を紹介する博物館さえある。ボルピ氏とスタッフたちは自社ビールをその特色に応じて命名し、「ガイザー(間欠泉)ビール」や「マグナ・ダブルモルト・アンバー」などがその一例だ。

 エネルは21年までに総発電量に占める再生可能エネルギー比率を半分に押し上げる目標を掲げており、地元のエコツーリズム振興事業の一環としてボルピ氏の取り組みを支援している。

 トスカーナはもともと高品質の食べ物やワイン生産で長い歴史を有し、低公害なビールやグルメが低炭素社会の実現を目指す人々をこの地に引き付ける一翼を担うことをボルピ氏は望んでいる。

 「今年は初めて米国の旅行会社を迎えた。彼らはトスカーナに1週間滞在し、持続可能なおいしい食べ物やワインを堪能した。これが進むべき道だ」と同氏は語った。(ブルームバーグ Chiara Albanese)

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