海外情勢

米中逆転の予想は非現実的 経済長期展望「既知の事実」に限界 (1/2ページ)

 日本が世界一の経済大国になろうとしていたのがいつだったかご記憶だろうか。笑い話ではない。映画「博士の異常な愛情」に登場するドクター・ストレンジラブのモデルとされる米ランド研究所の未来学者、ハーマン・カーン氏は1970年、日本の国内総生産(GDP)が2000年前後に米国を上回ると予測していた。

 同氏の予測はその後、真実味を増した。米紙ロサンゼルス・タイムズが1995年に掲載した記事は、円高効果もありGDP規模で米国に並ぶまでほんの数カ月のところまで日本は近づいたと分析。日本経済にとって失われた10年であった90年代の半ばにおいて、こうした見方が極端でなかったとは信じ難いが、権威ある米外交専門誌の論文でも日米逆転の可能性が取り上げられた。90年代初頭の経済成長率から推定すると、この予測にはほぼ反論の余地がないように見えたのだ。

 GDPで60%の開き

 米中逆転について語られる今、われわれはこうした推定の問題点に留意すべきだ。米ブルッキングス研究所の研究論文によれば、中国政府が公式発表している経済規模は実際より約16%大きく、2008年から16年まで9年間の実質GDP成長率が年平均で2ポイント近く水増しされていた。中国政府が今年の成長率目標を昨年から引き下げたことを考え合わせると、一種の業績見通し下方修正だ。

 スタンダードチャータードは10年、中国経済が20年までに米国を抜き、30年までに米経済の2倍近い規模になると予想。14年にはIHSマークイット・エコノミクスが24年に米中逆転が起きるとの見通しを示した。

 習近平政権下で中国経済が減速する一方、米経済が加速したことに照らすと、こうした予測は非現実的に見える。市場の為替レートや時価ベースに基づくと、米国のGDPは18年時点で20兆5400億ドル(約2300兆円)と、中国の13兆900億ドルより約60%大きい。既知の事実に基づく推測が、いかにミスリードを招きやすいかが分かる。

 米経済が20年間平均の2.2%でこれから成長し、現在の中国GDPと成長率予想にブルッキングス研究所の論文が示した調整を加味すると、中国のGDPは50年まで米国を下回り続けることになる。その頃までの人口動態の変化も、米国に追いつこうとする中国にとっては逆風だ。中国の労働力は現在、米国の5倍近い規模だが、3倍強にまで縮小する。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus