令和経済のキーワード(1)

中曽宏前日本銀行副総裁 「成熟経済」成長率より質重視 (1/2ページ)

 平成の時代は日本経済にとって、試練に満ちた激動期だった。課題先進国としての道を歩んだ一方、安定成長への移行期だったともいえる。日本は他国に先駆けて、ゼロ金利や量的緩和など非伝統的金融政策に着手した。先駆者であるが故に慎重になることもあったが、必要に応じて工夫と修正を重ねてきた。

 令和の時代の日本は外国人労働者や訪日外国人が一段と増え、異なる価値観や文化的な背景を持った人々が共存するコスモポリタン的な社会へと移行していくだろう。令和の文字通り、美しい調和に支えられた成熟経済としての様相を強めるのではないか。

 成熟経済になると、成長率よりも成長の質が重視されるだろう。日本は生産年齢人口が総人口よりも速いペースで減る人口オーナス社会に入った。出入国管理法が改正され、外国人労働者の安定的な供給が期待できる。深刻な人手不足に対応し、企業は生産性を上げるため省力化投資を積極化している。企業の自助努力を促す構造改革も必要だ。

 成長の質を高めていけると考えられる理由の一つが長寿化だ。平成の時代に日本人の平均寿命は男女とも5年延びた。労働者全体の労働時間は年間で約400時間減った。余暇に充てる時間が増えたことが人々の人生をより豊かにし、経済の質を押し上げるだろう。

 日本経済の規模は平成の時代に中国に抜かれ、3位になった。令和の時代はインドにも肉薄されるだろうが、必ずしも日本の立ち位置が低下することにはならない。グローバル化が進む中、日本は国際社会の責任ある一員として貢献することで、主導的な役割を果たせる。そのためにも、公共性とグローバル性を兼ね備えた人材を切れ目なく育てていく必要がある。

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