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小児脳腫瘍の治療に光明 ロシュの遺伝子標的薬、試験で効果

 その男児を救える時間はわずかしか残っていなかった。彼の脳腫瘍は急速に大きくなり、言葉をつなげることも困難になっていた。あらゆる標準治療を試したがいずれもうまくいかなかった。

 昨年夏、この男児は腫瘍の内部に見つかった非常にまれな遺伝子変異を標的とする治験薬の服用を開始。それから数カ月以内に腫瘍の縮小が始まり、認知症状が緩和。その後まもなく腫瘍はほぼ消えた。現在も服用を続けているが学校に復帰し、元気に生活している。

 男児はロシュ・ホールディングが開発を進める「ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ(一般名)」が効果を発揮した最初の患者の一人。この治験薬は脳腫瘍など治療が最も難しい小児腫瘍の一部に有効なことが示されつつある。男児の病状変化については治療に携わった医師団の一人が明らかにした。

 エヌトレクチニブの対象は小児がんのごく一部だが、今のところ、標的とする遺伝子変異を伴う患者12人全員に治療の効果が出ている。米国臨床腫瘍学会(ASCO)が15日、年次会合を前に臨床試験結果を公表した。年次会合は31日に開幕する。

 試験結果は暫定的で、効果の持続期間について言及するのは時期尚早だが、小児患者の多くは10カ月以上、治療を受けている。考えられる副作用としては体重増加や倦怠(けんたい)感などがある。

 エヌトレクチニブは3つの遺伝子が融合する遺伝子の変異を標的としている。こうした変異が、がん細胞の異常な増殖を促進するとされる。

 米食品医薬品局(FDA)はエヌトレクチニブを小児および成人への適応で審査中。ロシュによると、FDAは8月までに判断を下す予定。承認されれば、バイエルのTRK阻害剤「ビトラクビ」と競合する。同剤は昨年、成人および小児向けで承認を得ている。(ブルームバーグ Robert Langreth)

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