高度経済成長以降、地方都市は急増する人口の受け皿にするため、郊外で宅地などの開発を進め、市街地は拡大を続けてきた。だが地方では2000年代ごろから人口減少局面に入り、郊外に出店する大型商業施設も増えたことで「中心部で、商店街の空き店舗が増え、病院なども維持できない事態が顕在化した」(国土交通省)。
政府はこうした状況を踏まえ、衰退した中心市街地を活性化させようと、コンパクトシティー政策の推進に乗り出した。高齢者らが自動車に頼らずに、徒歩や公共交通機関だけで生活できる都市空間づくりが狙いだ。
14年に施行された改正都市再生特別措置法では、自治体が設定した区域への病院や福祉施設などの集約を促すため、整備費の補助や税制優遇、容積率特例などが設けられた。
国交省によると、空き商業施設を改修して市民交流拠点とした新潟県見附市や、主要バス路線沿いへの住居の誘導を目指す岐阜市など、18年末時点で440市町村がコンパクトシティーの計画を進めている。
ただ計画区域に施設が集中することで、域外の住民からは利便性低下を不安視する声は根強い。中心部と周辺を結ぶ交通機関の確保といった配慮も求められそうだ。
長崎市は土砂災害の危険性が高い斜面地から、生活基盤が整った平坦(へいたん)な市街地への住居の誘導を図る。斜面地では地滑りの危険がある空き家を除去して安全性を高めるなど、当面生活を続けられる対策を取る。
市の担当者は「集約区域以外も切り捨てはせず、建て替えや引っ越しを機に住み替えを求めたい」と話している。