27日に集中日を迎える3月期決算企業の今年の株主総会で、株主が議案を提出する「株主提案」を受けた企業が54社と過去最多になった。投資ファンドなどの機関投資家が提案を積極化させており、社外取締役の選任など経営の外部監視を厳しくする提案が目立つ。
機関投資家の行動指針「スチュワードシップ・コード」が浸透し、投資家が対話を求める傾向が強くなったことが背景にあり、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化につながることが期待される。
三井住友信託銀行の集計によると、6月総会で株主提案を受けた企業は54社(速報値)と昨年実績の42社を大きく上回り過去最多を更新。議案の数は175件で昨年から14件増えた。
JR九州は米資産運用会社ファーツリー・パートナーズから、1600万株、720億円を上限とする自社株買いや社外取締役選任など6本の議案の提案を受けた。これに対し、JR九州側は「設備投資を通じて中長期的な成長を実現するには、財務健全性の維持が必要」などと反対。21日の株主総会を前に対立の構図が鮮明になっている。
このほかの企業でも、剰余金の処分や、不祥事が起きた場合に備えて第三者委員会の設置に関し定款の変更を求めるなど、株主からさまざまな提案がされている。
こうした動きを後押ししているのが、責任ある機関投資家としての原則をまとめたスチュワードシップ・コードだ。相次ぐ不祥事などを背景に「株主も中長期的な企業価値向上に向けた対話や議決権行使を重視するようになった」(同行証券代行コンサルティング部の斎藤誠部長)こともあり、導入が拡大している。経営の透明性や成長期待が高まれば、日本株により多くの投資資金が流入する効果も望めそうだ。
◇
■スチュワードシップ・コード 投資と対話を通じて、企業の持続的な成長を促す機関投資家としてのあるべき姿を示した指針。議決権行使の方針や行使結果の公表などを求めている。今年5月時点で、信託銀行や保険会社など248社が受け入れを表明。リーマン・ショックの反省から英国が作った指針を参考に、日本では金融庁などが中心となって平成26年2月に策定した。