高論卓説

「幸福感」に着目した年金制度改革で社会の分断防げ (1/3ページ)

 世代間の公平性確保、社会の分断防げ

 歌舞伎に「封印切」という名作がある。近松門左衛門作の人形浄瑠璃を元にして歌舞伎化されたもので、人形浄瑠璃での初演が1711年というから、300年以上も前の作品だ。主人公は、飛脚問屋の養子忠兵衛と忠兵衛が入れあげた傾城の梅川。どうしても梅川を身請けしたい忠兵衛は、蔵屋敷から店が預かった小判300両をその身請けのために使ってしまう。大坂・新町の茶屋表座敷で小判の封印を切り、300両もの大金を投げつけるのが見どころだ。しかし、現代人には、この封印切の意味が分かりにくい。

 飛脚問屋とは、遠く離れた人から人へ金を預かり運び、その手数料をいただく、信用が何よりも大切な商売である。道中、金が抜かれないようにしっかりと封じ目に印をするのだが、江戸時代、封印のされた金包みなどを無断で開くと、公金横領で死罪にもなったという。今月、歌舞伎座において、名優・片岡仁左衛門さんの忠兵衛で上演されている「封印切」だが、これを見ながら、政府は国民から徴収した税金や社会保険料を封印などしないまま、自在に動かし財政のやりくりをしているにすぎないと気づかされた。

 例えば、現役世代の納めた年金保険料がしっかりと封印され、老後、確実な給付がなされる。すなわち、時空を超えたお金のやり取りを政府は国民に目に見える形で約束できていない。金融審議会の報告書をめぐり、激しい反発が起きたのも、自分が納めたものがどこかに消え、老後に受け取れないと現役世代が確信してしまったからだ。封印を意識しない政府がいくら「100年安心」と唱えても、納得はしまい。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus