専欄

「世界の多極化と国際関係の民主化」を推し進める中国

 世界は冷戦後の一超多強から多極化、あるいは米中二極化に向かって、歩みを速めているようにみえる。トランプの一国主義、そして米中「新冷戦」が国際秩序の転換に重大な影響を与えているといえよう。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 中国は冷戦終結前後から、世界は多極化に向かっているとの認識を示してきた。例えば、トウ小平は1990年3月に、世界は今後、三極、あるいは四極、五極に変化し、中国はそうした多極の中の一極を占めるだろうと語っている。

 このトウ小平発言の直後に開かれた全国人民代表大会(全人代)における政府活動報告は、世界は多極化の趨勢(すうせい)にあると述べている。年に一度の政府活動報告に、「多極化」という表現が登場したのはこのときが初めてである。

 中国はそれ以降今日まで、世界は多極化に向かっているとの認識を一貫して保持してきたが、多極化の実現について、常に楽観的だったわけではない。

 冷戦終結後に開かれた党大会の政治報告を比較すると、92年の第14回大会では、多極化秩序の形成は「長期的で複雑な過程」と、2002年の第16回大会では「多極化の趨勢は紆余(うよ)曲折しながら発展している」と、それぞれ述べている。多極化は一直線に進むものではないとの認識である。

 また、07年の第17回大会では「世界の多極化は不可逆的である」とし、17年の第19回大会では「世界の多極化は深く進展している」と述べている。ここには多極化実現への確信がうかがわれる。そうした確信の背景には、米国と中国の総合国力の推移、とりわけ両国間のギャップの縮小があるといえよう。

 総合国力の重要な構成ファクターである国内総生産(GDP)をみると、世界全体のGDPに占める米国GDPの割合は、1980年代に低下したものの90年代にいったん盛り返した後、再び低下している。世紀が変わる頃に30%を超えていたシェアは、国際通貨基金(IMF)の予測では、5年後の2024年には22%まで下がる。一方、中国のGDPシェアは24年には19%にまで上がる見込みである。

 多極化に関し、中国はそれを望み、推進しているプレーヤーでもある。特に中露両国は多極化を積極的に唱えており、先月、モスクワを訪問した習近平はプーチンとともに両国関係の新時代をうたい、「世界の多極化と国際関係の民主化」を推し進めることで足並みをそろえている。(敬称略)

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