海外情勢

NASA、夢を託すVR 有人探査の予算確保へ 疑似体験で魅力訴え (1/2ページ)

 米宇宙船アポロ11号が人類初の月面着陸に成功してから50年。米航空宇宙局(NASA)は再び人類を月面、そして火星に送り込む計画だ。計画の実現に必要な国民の支持を得るための秘密兵器として、仮想現実(VR)を活用し宇宙を疑似体験できるプロジェクトを進めており、NASAは大きな期待を寄せている。

 臨場感あふれる映画

 米国では、複数の有人宇宙飛行計画が進められている。民間企業ではイーロン・マスク氏率いる米スペースXが将来の有人飛行を想定したロケットの垂直着陸を見事に成功させたことで話題を呼んだ。一方、NASAは人類を月に再び送り込み、火星への飛行も視野に入れた次世代ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の計画に注力している。

 NASAは2024年までに再び人類を月に送り込む計画を進めている。同計画の実現に当たっては数百億ドル規模の追加予算確保が必要となり、そのためには有人宇宙開発に対する国民の支持を集めることが必要不可欠だ。しかし、1960年代と同様、現代の米国でも政治問題などへの関心が先行し、夜空を熱心に見上げる国民は少ない。

 AP通信とシカゴ大学の全米世論調査センター(NORC)が共同で5月に実施した世論調査によると、宇宙開発で優先すべき課題として「衝突の危険性のある小惑星の監視」を挙げたのが68%だったのに対し、「火星に宇宙飛行士を送ること」を挙げたのはわずか27%にとどまるなど、米国民の大半が有人宇宙飛行を重視していないことが分かった。

 こうした中、NASAは6月、国際宇宙ステーション(ISS)を民間人の宇宙飛行や商業利用に開放すると発表した。滞在費は1泊3万5000ドル(約374万円)だ。こうした話題作りに加え、NASAが期待をかけているのが、ISS内外の映像を使用したVRドキュメンタリー映画だ。

 映画はISS内の米国国立研究所を管理する宇宙科学促進センター(CASIS)、カナダのVRコンテンツ制作会社フェリックス&ポールスタジオ、米タイム誌が共同制作している。

 NASAはこれまで数々のドキュメンタリー作品制作への協力の他、ソーシャルメディアを活用した情報発信を積極的に行ってきた。今回の合同プロジェクトではVRという最先端技術を活用することで、1969年の画質の粗いテレビ放送では実現不可能だった臨場感あふれる宇宙の映像を人々に届ける。

 現在、共同チームが制作中の6部構成のVR映画「ISSエクスペリエンス」は2020年に一般公開される予定だ。この映画には2つの狙いが込められている。一つはVRへの大衆の関心を高めること、もう一つは人類を再び宇宙に送り出すことだ。

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