海外情勢

苦境インド鉄鋼、需要伸びず 過去3年で最低 19年度6%割れも

 インドの鉄鋼需要が経済減速を背景に、過去3年で最も低い伸び率にとどまる可能性がある。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのインド部門ICRAによると、2019年度(19年4月~20年3月)の鉄鋼需要の伸びは6%に届かない可能性が大きい。これは16年度(3.1%増)以来、最低の水準となる。

 ICRAのシニアバイスプレジデント、ジャヤンタ・ロイ氏はインタビューで「6~7%の需要の伸びを見通していたが、7%は難しく、6%も楽観的だ」と語った。

 インドの鉄鋼業界は現在、苦境に立たされている。最大手タタ・スチールは、影の銀行(シャドーバンキング)部門の危機に伴う資金逼迫(ひっぱく)と、ここ5年間で最低の経済成長の影響を受け、4~6月期の最終利益は16年10~12月期以来最低の水準に落ち込んだ。同業のJSWスチールも前年同期比で57%の減益だった。

 インドの株価指数S&P・BSEの金属指数は今年に入り約30%下落し、ボンベイ証券取引所の19業種で最も大きく下落した。

 インド経済は7月の自動車販売が約20年間で最大の落ち込みとなったほか、6月のインフラ部門の生産も15年4月以来で最低の伸びとなるなど減速感が強まっている。

 ただ、19年度のインド鉄鋼需要は世界鉄鋼協会が1.3%と予測する世界全体の伸び率を上回る見通しだ。世界鉄鋼需要は17年度に5%、18年度が2.1%それぞれ伸びたのに対し、インドはインフラ増強政策に支えられ17年度に7.9%、18年度で7.5%伸びた。インド鉄鋼省によると、18年度の鉄鋼需要は9750万トンで、5年間で32%増加した。

 一方で、世界の鉄鋼大手には弱気な見通しが広がっている。世界最大手、欧州のアルセロールミタルが8月に需要予測を下方修正したほか、中国の鉄鋼大手、宝山鋼鉄は中国の需要低迷が今年後半も続くと見込む。

 ロイ氏はインフラ部門が引き続きインドの鉄鋼需要の最も重要な牽引(けんいん)役とみる。ただ、同部門への民間支出は少なく、新規の財政支出が必要と指摘する。

 シタラマン財務相は8月23日、海外投資を呼び込む税控除や自動車購入・リースに対する特例措置など経済対策を打ち出した。ただ、エコノミストや経済界、現地メディアからは、主要な財政支援が伴わず、その効果を疑問視する。

 ロイ氏は「鉄鋼業界は今年度後半の鉄道、パイプライン、送電、郊外のインフラ、道路などの大規模プロジェクトに注目している。加速しなければ懸念は高まる」と指摘した。(ブルームバーグ Swansy Afonso)

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