国内

年金改革 中小に危機感も 非正規加入促進、保険料の負担増 (2/2ページ)

 人手不足加速も

 「年金の給付水準を確保する上でプラスであることを確認」。厚生労働省が8月末に公表した5年に1度の年金財政検証の結果説明資料には、制度改正の効果を強調する文言が並ぶ。

 高齢者の受け取り始めの年金額が、現役世代の平均手取り収入に対して何割かを示す「所得代替率」は、現在61.7%。現行制度に手を付けなければ将来、経済成長が標準的なケースで50.8%まで目減りする。

 企業要件を撤廃し、短時間労働者125万人が厚生年金に加入する試算では、代替率が51.4%に上昇。加えて「収入が月8万8000円以上」となっている賃金要件をなくせば、計325万人が加入し代替率が51.9%に。さらに条件を緩和すれば計1050万人が加わり、代替率も55.7%まで改善すると強調する。

 「将来受け取る年金が増えるならメリットがあるかもしれないが、今の収入から保険料が引かれると生活が厳しくなる」。福岡県飯塚市の福祉施設で週3~4日、パートとして働く西山陽子さん(40)は複雑な心中を語る。会社員の夫と2人の子供の4人暮らし。西山さんの収入が家計を支えており切実な問題だ。

 経営者の間には、企業要件を撤廃しても、厚生年金加入の対象から外れようと勤務時間を減らす従業員が出て、結果的に人手不足が加速するのではと心配する声もある。

 制度改正を議論している厚労省の有識者懇談会でも、賛否で意見が割れている。法政大の菅原琢磨教授は「雇用される企業によって加入要件が違うのは合理性に乏しい」と指摘。中小企業に配慮して段階措置を設けた上で「最終的には企業要件をなくすべきだ」と主張する。

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