海外情勢

フィンランド、デジタル技術で遠隔介護 費用9割減の自治体も

 手厚い福祉政策で知られる北欧フィンランド。近年“欧州の中の日本”と呼ばれるほど急速に高齢化が進み、社会保障費の膨張が大きな問題に。制度維持に黄信号がともる中、切り札として最新デジタル技術を使った遠隔介護が本格化、9割近く費用を削減した自治体も出てきている。

 「気分はどう? 薬は飲みましたか」。7月上旬の午前11時。首都ヘルシンキ市のサービスセンターで、看護師のニーナ・モイラネンさん(45)が、パソコンに向かって手を振った。画面の向こうから、市内の自宅にいる女性(72)が薬の容器を手に「飲みましたよ。今日は買い物に出かけるの」と返した。パーキンソン病を患うこの女性が利用する、市の遠隔訪問サービスの様子だ。薬を飲む時間になるとタブレット端末の呼び出し音が鳴る。女性は「飲み忘れないので安心。会話も楽しいし、寂しい気持ちが紛れる」と話す。

 フィンランド人は自立した生活を好むと言われ、成人した子供との同居は少ない。自宅を「ついのすみか」と考え、75歳以上の国民の9割が自宅で暮らす。在宅生活を支えるのは、自治体が提供する訪問看護・介護制度だ。

 しかし、こうした福祉制度は急激な高齢化で危機に直面している。フィンランド人は「幸せな納税者」と呼ばれ、高負担を受け入れてきたが、今後、制度の支え手となる現役世代は減少する。

 ヘルシンキ市は2014年から遠隔訪問を導入。交通費など実際に訪問する費用が1回45ユーロ(約5300円)なのに対し、5ユーロと費用削減効果は絶大だ。利用者は約800人、平均年齢は約80歳で、ある程度身の回りのことができる人に使ってもらい、介助が必要な人に人手を割ける利点もある。

 「直接会うべきだ」と遠隔でのやり取りを疑問視する意見もあるが、同市のサンナ・ベシカンサ副市長(47)は「家に他人が入るのを嫌がる人もおり、日常生活を邪魔されないと好評だ」と強調。複数の利用者が画面越しに集まり“ランチ会”を開催するなど交流も生まれ、自宅から出られない人に喜ばれている。(共同)

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