海外情勢

インド、全土に顔認証カメラ計画 犯罪対策 システム入札あす開始

 インドのモディ政権は犯罪対策の一環として大規模な顔認証システムの導入を計画しており、同システムへの入札を10日から開始する。同システムは一部企業にとって商機となる可能性がある半面、既に同様のシステムを導入している中国のように監視社会化が進むとの懸念も浮上している。

 モディ政権はインド全土に監視カメラを設置し、これらのカメラから取得した顔認証データを一元管理するシステムを構築する計画だ。撮影された顔認証データはパスポートや指紋などの記録を含むデータベースとも連携させ、容疑者や行方不明者、死体の身元確認に活用する。

 インド政府は今回のプロジェクトについて、インドの深刻な警察官不足に対処し、犯罪捜査などを効率化することを目的としていると語った。インドの警察官1人が担当する人口は724人で、世界でワーストクラスの水準だ。

 今回のプロジェクトは一部のハイテク企業などに多くの商機をもたらす可能性がある。グローバル有力市場調査会社のテックサイ・リサーチはインドの顔認証システムの市場規模が2024年までに今の6倍に当たる43億ドル(約4600億円)に拡大し、中国とほぼ肩を並べる水準になると試算している。

 ただ、現時点では今回のプロジェクトにどれだけのインド企業が参加できるかは不透明だ。インドの新興企業、スタク・テクノロジーズのアトゥール・ライ最高経営責任者(CEO)によると、入札に当たっては米国国立標準技術研究所(NIST)が定めるセキュリティー標準を満たす必要があるため、現地企業の多くが今回の入札に参加できない可能性があるという。

 現在、CP+(シーピープラス)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)、パナソニックなどの海外の監視システムを手掛けるハイテク企業がインドで事業を展開している。今回のプロジェクトにこれら海外企業が多数参入することになれば、スパイ活動に利用される恐れがあるとの懸念が浮上している。

 中央政府のシンクタンクは8月、デリーの行政当局が15万台の監視カメラ(CCTV)を設置するに当たって中国の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)のインド部門を起用した件で、違法なハッキングや個人情報漏洩(ろうえい)につながるとして批判した。

 インドでは昨年に個人情報保護法の素案が提出されたものの、まだ議会に提出されていない。こうした法整備が不十分な状況で大規模な顔認証システムを導入すれば、人権侵害やプライバシー侵害が助長されるとの声も上がっている。

 デジタル著作権を擁護するインドの団体、インターネット・フリーダム・ファウンデーション(IFF)のエグゼクティブ・ディレクター、アパル・グプタ氏は「私たちは民主主義でありながらもデータ保護法やプライバシー法が存在しない中でシステムを作ろうとしている。保護されていない大規模なデータベースを求める企業にとっては大金脈だろう」と指摘した。(ブルームバーグ Archana Chaudhary)

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