海外情勢

ベトナム、米中摩擦のチャンス生かせず 製造インフラ難で代替能力は不十分 (1/3ページ)

 米中貿易戦争で中国に拠点を置く輸出企業の生産移管先として注目を集めるベトナムが商機を生かし切れていない。需要拡大にインフラ整備が追いつかず、不動産価格の高騰やハイテク企業が求める人材不足など課題は多い。また「ミニ・チャイナ」の呼び声とは裏腹に、生産性で中国本土を25~30%下回るとの見方もある。

 コンテナ荷揚げ滞る

 米IT大手アルファベット傘下のグーグルから米インテリアショップ、クレート&バレルといった各企業は、この20年来「世界の工場」と呼ばれてきた中国から、サプライチェーン(供給網)を移管する先としてこぞってベトナムに投資している。東南アジアの成長エンジンとして注目を集める同国は、若年の中間層が厚みを増す中、多数の国や地域と自由貿易協定を交わし、外資の製造業進出が活況を呈している。

 ただ、期待の高さに実態が追いついていない。港湾・道路の混雑や土地・人件費の高騰、規制緩和の遅さに不満を表す企業はますます増えている。「コーチ」や「ケイトスペード」などのブランドを展開する米タペストリーは、インフラ投資不足で一部コンテナが荷揚げできないまま海上に残されていると肩を落とす。ナイキに供給している台湾の儒鴻(エクラ・テキスタイル)はもっと安くて済む場所を含め、ベトナム以外に移転先を多様化する必要性に言及する。

 米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのバイスプレジデント、ゲリー・マティオス氏(シンガポール在勤)は、ベトナムが急ピッチでインフラ格差を埋めることができなければ、2015年以降、ベインの顧客である多くの玩具メーカーを引き付けてきた「ミニ・チャイナ」の地位を失うリスクがあると指摘。コストがメリットを上回る恐れがあり、そうなれば製造業者はスリランカやカンボジアに向かうと話す。

 ただ今のところ、資金はどんどん入ってきている。ベトナム政府の統計によれば、今年1~8月の外資による直接投資は総額120億ドル(約1兆2800億円)と前年同期を6.3%上回った。新規プロジェクトの登録件数は同25%増の2406件だ。

 ベトナムにとって港湾設備を中心とするインフラ整備は大きな課題だ。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによれば、コンテナ輸送量世界トップ10の港湾のうち、1位の上海など中国が6カ所を占める半面、ベトナムの2大港、ホーチミンとカイメップはそれぞれ25位、50位だ。17年の世界のコンテナ輸送のシェアをみても、ベトナムの2.5%に対し、中国は40%と大きく水をあけられている。

 ベトナム政府は港湾施設の開発費用を約80兆~100兆ドン(約368億~460億円)と見積もるが、新たに港湾を開設したり古いものを改修したりするといった巨額案件はまだ実現していない。

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