国内

米中摩擦で日本輸出低迷 「部分合意」に安堵の声も 拭えぬ不透明感

 21日発表の令和元年度上期(4~9月)の貿易統計で輸出を押し下げる要因となった米中の貿易摩擦をめぐっては、今月中旬の米中の閣僚級による貿易協議が部分合意に達したことで、「一段落するだろう」(市場関係者)と安堵(あんど)する声も上がっている。しかし世界経済に関しては英国の欧州連合(EU)離脱問題など火種もくすぶる。経済の先行き不透明感は拭えないままで、日本の輸出を下押しし続ける恐れがある。

 中国向けの輸出はハイブリッド車など自動車は伸びたが、半導体製造装置や自動車部品が前年同期比で3割前後の大幅下落となった。

 一方、米中摩擦がひとまずは沈静化に向かっていることは安心材料だ。米国は15日に予定していた中国への制裁関税引き上げを見送っており、農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「トランプ米大統領も来年の大統領選を見据え、景気悪化は避けたいのでは」と米中摩擦が落ち着く方向に進むとの見方を示した。

 ただ、米中貿易摩擦以外にも、英国がEUからの「合意なき離脱」を強行するリスクや、くすぶる米欧の関税合戦が泥沼化し、両者の深刻な対立へと発展する恐れもある。

 国際通貨基金(IMF)は15日発表した世界経済見通しで、今年の世界全体の実質経済成長率を3・0%とし、前回の7月時点から0・2ポイント下方修正。米中の部分合意は織り込まれていないが、リーマン・ショック後では最低水準だ。

 世界経済をめぐるリスクが顕在化した場合、日本からの輸出も低迷が続き、日本企業の投資や個人の消費意欲も冷え込みかねない。10月1日の消費税増税による消費への影響も懸念され、南氏は「今後も予断を許さない状況が続く」としている。(林修太郎)

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