海外情勢

世界最長の海上橋開通1年 総工費約1兆7千億円も香港抗議デモの影響で…

 香港、マカオと中国本土側の珠海を結ぶ世界最長の海上橋の開通から1年が過ぎたが、香港の抗議デモ深刻化で利用数が計画通りに伸びていない。中国政府は3地域を一体化して地域経済圏を築く構想を推進するが、香港では経済や人の往来の垣根が下がって融合が進むことへの警戒感が増している。中国側は香港を牽制するためかマカオ経済を重視する姿勢もちらつかせており、香港のデモが近隣地域にも影響を与えている。(広東省珠海 三塚聖平)

 「大橋ができても景気は良くない。最近は香港の暴動で往来がさらに減った」

 24日に一般通行開始から1年を迎えた「港珠澳(香港・珠海・マカオ)大橋」の中国大陸側起点・珠海の出入境施設で客待ちをしていたタクシー運転手(49)が困った顔を見せた。

 総工費約1200億香港ドル(約1兆7千億円)をかけた巨大事業で、全長は海底トンネルなども含めて約55キロ。陸路で約4時間かかった珠海-香港国際空港間が45分に短縮された。利便性は向上したが過去1年間の1日平均車両数は約4100台と、事前推定(1日あたり9200~1万4000台)に大きく及ばなかったと香港紙が伝える。

 平日の昼間に香港発、珠海行きの大型バスに乗ったが、車内の乗客は10人弱で空席が目立つ。香港側券売所の女性は「利用者が少なく便数も減らしている」と打ち明けた。珠海のタクシー運転手も「怖がって香港に行く人は減ったし、香港もデモのせいで景気が悪くなったから、こちらに来なくなった」との見方を示す。

 中国政府は広東省沿岸部と香港、マカオを覆う地域経済圏構想「大湾区(グレーターベイエリア)」を2月に正式始動させたが、港珠澳大橋はその象徴だ。インフラ整備が先行して進み、昨年9月には「広深港(広州・深セン・香港)高速鉄道」も全線開通した。

 各地では経済効果が期待される一方で、香港では高度な自治を認めた「一国二制度」が形骸化される懸念がある。広深港高速鉄道も、香港側の駅構内に中国の出入境施設などが設置され、中国本土の職員が中国の法律に基づいて業務を行うことが問題視された。抗議デモの進展に伴い一体化への反発は強まっている。

 そんな中で広東省の金融監督管理局が今月中旬、「マカオ証券取引所」の設立案を中央政府に提出したことが注目された。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は「マカオは金融センターになる実力を持っている」という識者論文を掲載。いうまでもなく「金融センター」は香港の代名詞で、同論文は「最大限に『一国二制度』の優位性を発揮し、さらに大きな発展を経済で得ることができる」と、香港で疑問視されている『一国二制度』を引き合いに出す形でマカオの将来性を強調した。

 マカオで観光関連会社に勤める会社員の李干森さん(29)は「中央政府がマカオ経済を強化することへの期待は高い。香港も暴動を止めて経済に集中した方がいい」と述べた。

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