海外情勢

香港衝突で“金融ハブ”の地位を危ぶむ声 シンガポールにマネー流出

 民主化を求める抗議デモ参加者と警察の衝突激化で香港情勢が再び緊迫し、市場関係者らの間に香港の地政学リスクを回避しようとする動きが本格化してきた。アジアの金融ハブ(拠点)都市としての地位を危ぶむ声が高まり、香港向け投資が急減するのは避けられないとみられている。

 揺らぐ“金融ハブ”

 抗議デモ参加者らは12日、香港中心部の金融街、中環(セントラル)で道路を封鎖したほか、朝の通勤も妨害し、警察と衝突した。香港警察は、抗議活動参加者に催涙ガスを発射。デモ参加者や居合わせた人々が安全な場所に逃げ込んだ。地下鉄を運営する香港鉄路(MTR)は12日午前、ウェブサイトで九竜と新界から香港島に向かう4つの主要路線で運転を見合わせた。

 米国務省のオルタガス報道官は11日の声明で「香港が米国の法律の下で認められている特別な待遇を保ち、『一国二制度』が成功を収め、将来の安定・繁栄を確保する上で、香港の自治と法の支配の順守、市民の自由の保護が鍵を握ると米国は確信している」と主張。米国が「重大な関心」を持って香港情勢を見守っていると表明した。

 中国外務省の駐香港特派員公署は12日の声明で、「黒服の暴徒」の行為はテロと何ら変わりはないと主張。米国や英国の政治家は香港警察を非難することで「違法な暴徒」と共謀を試みていることを示していると反発した。

 香港の林鄭月娥行政長官は同日の定例記者会見で、区議会議員選(地方議会選)を予定通り24日に実施したいとの意向を示した。

 既に長期化する抗議活動により、香港経済の苦境が浮き彫りになっている。特に観光や小売業界が深刻な打撃を受け、香港経済は7~9月期にリセッション(景気後退)入りした。

 また、香港株は過去数カ月で約5300億米ドル(約58兆円)相当上昇したが、デモ激化を受け、危機に直面している。香港株の指標であるハンセン指数は11日、前週末比2.6%安と急落したのに続き、12日も0.5%下げた。

 こうした中、香港はアジア随一の金融ハブとしての地位を脅かされつつある。香港は長らく中国本土と世界を結ぶ金融の玄関口との役割を果たしていたが、過去数カ月で政情不安から資金を海外に移転する動きが加速。米金融大手ゴールドマン・サックスによると、投資家は8月までで最大40億ドルの預金を香港からシンガポールに移した可能性がある。

 不動産市場にも影

 不動産市場への影響も鮮明になっている。アーバン・ランド・インスティチュートとプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が12日公表した報告によると、価格上昇の観点から見たアジア太平洋地域の2020年不動産投資見通しランキングで、香港は19年の14位から最下位に転落。一方、ライバルの金融ハブであるシンガポールが首位に躍り出た。投資家の間で中国や香港を「地政学的な火種」として敬遠する動きが強まっており、シンガポールはその恩恵を受けた。

 アーバン・ランド・インスティテュートのウォルター最高経営責任者(CEO)は同リポートで、香港を「非常に回復力の高い市場」とし、もしデモが終了すれば小売りなどのセクターはすぐに回復するだろうと評価。一方、「最大の問題はデモ後の香港の政治情勢と、それが金融ハブとしての地位に与える影響だ」と指摘した。(ブルームバーグ Dominic Lau、Faris Mokhtar)

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