山本隆三の快刀乱麻

水素充填で1000キロメートル走行可能 EU、鉄道部門の温暖化対策進む (1/2ページ)

 ドイツが燃料電池列車運行

 気候変動対策に本気で取り組むことを求め、学校を休んで国会前でストライキを始めたスウェーデンの高校生、グレタ・トゥンベリさん(16)は一躍時の人となり、ローマ法王との面談、欧州連合(EU)議会やダボス会議などでスピーチを行った。

 彼女は、気候変動問題に関心を持ったときから航空機の利用をやめ、移動には鉄道を使っている。今年9月にニューヨークで開催された国連の気候行動サミットには、大西洋をヨットで渡って駆け付け、ニュースになった。

 英仏も導入見通し

 鉄道を利用するのは、1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が航空機や自動車より少ないためだ。特に欧州内は鉄道網が発達しており、短中距離を移動するには鉄道が便利だ。ロンドン、パリ、ブリュッセルを結ぶユーロスターは有名だが、スペイン、ドイツ、イタリアなどでも高速鉄道が発達している。高速鉄道網が充実すれば、鉄道利用者が増え、気候変動対策にも貢献することになる。

 EUでは、2050年の温室効果ガス純排出量ゼロを目指すことも議論されており、輸送部門からのCO2排出削減が求められている。自動車部門の対策としては、電気自動車(EV)の導入策が英、仏、独などの欧州主要国で産業政策としても進められている。鉄道部門のCO2排出量は、自動車部門より少ないものの、鉄道部門でも削減策が進められてきた。

 その対策の一つが、電化されていない地方路線のディーゼル列車を燃料電池列車に切り替えることだ。水素を化学反応させて電気をつくる燃料電池では、排出されるのは水だけで、気候変動対策として大きな効果がある。水素は化石燃料から製造でき、製造工程でのCO2排出が問題になるが、EUではこの問題も視野に入れた取り組みを進めている。

 日本では、燃料電池車(FCV)が既に市販されているが、燃料電池列車については研究開発段階でまだ実用化されていない。日本企業がFCVを実用化している間に、欧州企業は列車での実用化を図り、ドイツでは既にフランス製の燃料電池列車が運行されている。フランスや英国などでも導入の見通しが立ってきたという。

 自動車は電気、列車は水素で動かすと考える欧州勢が世界の主流になれば、日本企業は取り残される可能性がある。欧州の鉄道は、どのように発展を遂げているのだろうか。

 欧州主要国の運輸部門と自動車のCO2排出量でみると、自動車からの排出量が圧倒的に多いものの、鉄道部門の排出量も無視できない数字だ。英国では、列車、国内航空機のCO2排出量は運輸部門全体の5%程度だが、50年に排出ゼロを目指すには削減が必要になる。英国が高速鉄道建設を計画する背景には、移動手段を航空機から鉄道に切り替えてもらい、CO2排出削減を進める狙いもある。

 英国政府は、まずロンドンからバーミンガムまで高速鉄道を建設し、その後、バーミンガムから北に分かれる路線を建設する「HS(ハイスピード)2計画」を立てている。

 第1段階では、最高時速400キロメートルの列車でロンドン-バーミンガム間を52分で結ぶ計画だ。1100人乗りの列車を1時間に最大14往復させる。第2段階では、バーミンガム-マンチェスターと、バーミンガム-リーズの2路線が建設される。ロンドン-マンチェスター間の所要時間は、現状の2時間7分が1時間7分に短縮される。

 建設プロジェクトに既に着手しているが、英国政府は第三者委員会を設けてプロジェクトの費用便益分析を行い、今年の年末までに結論を出すと8月下旬に発表した。現地では、工期が遅れ、工費が増大する懸念があると報道され、運輸大臣が9月上旬、工費の増大を認め、完工予定も遅れる見通しであることを発表した。

 15年時点で560億ポンド(約7兆4000億円)と見積もられた工費は、880億ポンドまで膨らみ、26年に完成予定の第1段階は28~31年に、全体の完成は33年から35~40年に遅れる見込みと発表された。

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