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年金改正案に負担増の企業は“悲鳴” 延びる老後、苦心の制度改革

 厚生年金の制度改正案の骨格が出そろった。政府の年金制度改正は、高齢者の就労意欲をそがずに年金制度の支え手になってもらうとともに、老後の長期化で低年金の人が生活に困らないようにする狙いがある。安倍晋三首相が議長を務める全世代型社会保障検討会議の議論を経て来年の通常国会に関連法案提出を目指すが、負担増となる経済界は反発している。

 就労意欲そがぬよう

 「一生懸命働いたのに年金額が減って、驚いたし、嫌気が差した」。千葉県市川市の運送業の男性(69)が批判するのは、働いて一定以上の収入がある高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」だ。65歳以上の場合、現在は働いて得た収入と年金の合計が「月47万円超」ならば、超えた分の半額が差し引かれる仕組みになっている。

 男性は「年金を減らされないようにするため、働く量を調整する仲間も多い」と明かす。同制度が「働く意欲を阻害する」と指摘される典型例だ。厚生労働省は13日、社会保障審議会の部会で見直し案を提示。基準額を「月51万円超」に改め、9万人が減額対象から外れる。

 厚労省が制度を見直す理由は就労意欲の阻害だけではない。多様な形態で働く高齢者が増え、平均余命が延びて老後が長期化するといった社会の変化に柔軟に対応し、高齢期の経済基盤を強固にする必要があるからだ。このため、年金制度改正案には複数の見直しが盛り込まれる。

 年金の受給開始時期は現在60~70歳で自由に選べるが、選択肢を60~75歳に拡大。受け取り開始を遅らせるほど、月々に受け取れる年金額は増えることになる。

 低年金への対策も

 制度改正のもう一つの大きな柱が無年金・低年金対策だ。公的年金が目減りする中で、国民年金のみに加入しているパートなど短時間労働者が厚生年金に加入できる企業要件を「従業員501人以上」から「51人以上」に引き下げる。これによって約65万人が新たに厚生年金に加わる見込み。さらに厚生年金への加入義務がある個人事業所に弁護士や公認会計士の事務所も含める。

 このほか老後の資産形成も後押しする。企業や個人の判断で入れる私的年金「確定拠出年金」は加入年齢を緩和。現在原則59歳までだが、掛け金を一人一人が払う個人型の「iDeCo(イデコ)」は64歳まで、会社側が出す企業型は69歳までとする。

 ただ厚生年金の保険料は労使折半のため、企業の負担にもつながる。「中小企業の経営に大きなインパクトを及ぼしかねず、慎重な議論が必要だ」。自民党が12日に開いた社会保障制度調査会の委員会では、日本商工会議所の幹部が懸念を示した。政府は企業向けの支援措置を講じることで経済界の理解を得たい考え。ある財界関係者は「企業の悲鳴に配慮してほしい」と強調する。

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