海外情勢

インドで携帯業界が苦境 財政赤字の政府が取り立て「カネを搾り取ろうとしている」

 中国に次ぐ世界第2位の規模を誇るインドの携帯通信業界が苦境に立たされている。顧客獲得のための値下げ競争が激化していることに加え、財政赤字を抱える同国政府が周波数帯オークションを実施し、高額の電波利用料を取り立てているためだ。さらに、10月下旬には同国の最高裁判所が複数の携帯通信会社に対し未払い金として最大130億ドル(約1兆4150億円)を政府に支払うよう命じたことも追い打ちをかけている。

 「カネ搾り取る政府」

 潜在顧客10億人以上とされる印携帯通信市場の成長力に、かつて世界各地の企業が熱視線を送っていた。英ボーダフォン・グループをはじめ、ノルウェーのテレノール、ロシアのモバイル・テレシステムズなどの海外の通信事業者が印市場に相次ぎ進出した。

 しかし、ここにきて有望視されていた印携帯通信市場の先行きに暗雲が立ち込めている。印携帯通信市場の競争は2016年に参入した携帯通信会社リライアンス・ジオ・インフォコムが無料通話と格安のデータ通信を提供したことを機に、一段と激化。同社の参入により1分当たり1セントを下回る通話料金体系を強いられ、大部分の企業の収益が悪化した。合併や撤退で業界再編が急速に進み、現在はボーダフォン・アイデア、バーティ・エアテル、リライアンスの大手3社に集約された。

 しかし、この3社も経営を揺るがす窮地に立たされている。印最高裁が10月下旬、バーティ・エアテルやボーダフォン・アイデアなど通信会社8社に対し、電波利用料などの未払い金最大130億ドルを政府に支払うよう命じたためだ。このうちボーダフォン・アイデアは約40億ドルを支払う必要がある。金融省元高官のマハン・グルスワミー氏は「政府は携帯通信業界から最大限のカネを搾り取ろうとしている。今回の判決はボーダフォン・アイデアを事実上の倒産に追い込み、結果としてインドの携帯通信事業は2社による複占になるだろう」とみている。

 印政府は携帯通信事業を高収益ビジネスと見なし、同セクターから得られる巨額の収入に期待をかけている。同国は携帯通信業界を重要セクターと位置付ける「新電気通信政策」を推し進める中、政府当局は周波数帯オークションでの落札額や電波利用料など年間数十億ドルもの収入が政府の懐に入るとそろばんをはじく。15年の周波数帯オークションでは、インド政府は前年実績の100億ドルを大きく上回る180億ドルの収入を得た。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、インドの主要な携帯通信事業者の総収入に占める電波利用料の割合は7.6%と世界トップだという。

 我慢の限界と業界反発

 バーティ・エアテルのインド・南アジア担当の元最高経営責任者(CEO)、サンジャイ・カプール氏は「インドの携帯通信市場は3つの問題を抱えている。競争の激化、巨額の電波利用料の支払いなどに伴う高コスト構造、利用者1人当たりの売上高の低さだ」と嘆く。

 今回の判決を受け、インド携帯電話事業者協会(COAI)は「我慢の限界である」と反発。バーティ・エアテルとボーダフォン・アイデアは政府に対し、業界の懸念に対処し、財務上のストレスを軽減するよう求めた。英調査会社アナリシス・メイソンの南アジア・中東担当責任者を務めるロハン・ダーミジャ氏は「ボーダフォン・アイデアが倒産すれば、インドの携帯通信市場は複占状態となり、市場構造の健全性が損なわれる。このため、政府が同セクターを支援する可能性がある」と指摘した。(ブルームバーグ Ragini Saxena、Upmanyu Trivedi)

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