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関係多様で約20種類 中国の「パートナーシップ外交」

 中国外交の特徴の一つは、全方位的にパートナー関係を結ぶ「パートナーシップ外交」である。10月末の中国共産党中央委員会総会(第19期4中総会)の決定も、国家統治システム現代化の一環として、「グローバルなパートナーシップを積極的に発展させる」と述べている。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 中国が冷戦時代の同盟政策を否定してパートナーシップ外交を展開するのは、冷戦終結後の1990年代になってからである。93年にブラジルと「戦略的パートナーシップ」を結んだのが最初で、それ以降、国だけでなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)といった地域機構などともパートナー関係を積極的に樹立している。

 パートナー関係は多様で約20種類あり、関係が極めて良好なパキスタンとは「全天候型の戦略的協力パートナーシップ」、ラオスやカンボジアとは「全面的な戦略的協力パートナーシップ」といった具合である。

 また、ブラジルとのパートナー関係が2012年に「全面的な戦略的パートナーシップ」に格上げされたように、関係緊密化に応じて変化している。ロシアとは、当初の「建設的パートナーシップ」が「戦略的連携パートナーシップ」に、さらに「全面的な戦略的連携パートナーシップ」に、そして今年6月には「新時代の全面的な戦略的連携パートナーシップ」へと、徐々に格上げされている。

 「新時代」は習近平が17年の第19回党大会で提起した時代認識で、富国から強国への転換を意味するキーワードでもあり、習近平は内政にとどまらず外交でも新時代を唱えている。

 パートナー関係は今や、世界をカバーするネットワークともなっており、習近平は18年6月の中央外事工作会議で、パートナー関係のグローバルなネットワークの構築、整備を訴えている。今年9月に中国政府が発表した白書「新時代の中国と世界」によると、中国が結んだパートナー関係は、110の国や地域機構などに及んでいる。

 日中間では、江沢民が1998年に訪日した際の共同宣言で、「友好協力パートナーシップ」がうたわれた。その後、関係悪化から関係改善を経て、現在は、戦略的互恵関係が両国関係を律するキーワードとなっている。

 来春に予定されている習近平の訪日に際して、新しい政治文書が作成され、両国関係を規定する新しいパートナー関係が打ち出されるのだろうか。(敬称略)

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