海外情勢

中国の「選挙介入」で応酬 国民党が反転攻勢 台湾・総統選

 【台北=田中靖人】台湾で来月11日に投票される総統選で、中国による「選挙介入」の有無が与野党の争点に浮上している。政権与党は、中国共産党と野党、中国国民党との近さを念頭に、中国が選挙に介入していると強く警鐘を鳴らしてきた。だが今月に入り与党、民主進歩党の有力者に近いとされる人物がネットの世論操作に関与したとして起訴され、国民党は反転攻勢に出ている。

 「中国共産党は各種の浸透(工作)で選挙に影響を与え、台湾人を屈服させようとしている」

 対中政策を主管する大陸委員会の陳明通主任委員(閣僚)は4日、立法院(国会に相当)の内政委員会でこう述べ、中国の選挙介入は「国際社会の公知の事実だ」と強調した。再選を目指す蔡英文総統も11月19日、記者団に「中国の選挙介入はここ1日、2日のことではない」と述べ、介入工作が恒常的に行われていると示唆した。

 台北地方法院(地裁)は3日、退役軍人の団体が2008~12年、中国の国政助言機関、人民政治協商会議の委員を務める香港企業の役員らから献金約1000万台湾元(約3560万円)を受け取った政治献金法違反罪などで、当時の団体会長の元陸軍中将に懲役2年6月の有罪判決を下した。元中将は国防部(国防省)の次官まで務めた人物で、08年と12年の総統選の投票日直前、国民党の馬英九氏への投票を呼びかける新聞広告を掲載していた。

 中国の選挙介入をめぐっては11月下旬、オーストラリアに亡命申請した中国の元工作員を名乗る男性が、昨年の統一地方選で国民党を支援するため、ネットの世論を誘導する「網軍」を編成したほか、2000万人民元(約3億円)を同党の候補者に迂回献金したと豪州メディアに証言した。

 報道を受け民進党の立法委員(国会議員)団は、中国からの政治介入への罰則を強化する「反浸透法案」を提出。国民党は「既存の法律に屋上屋を架すもので、政治操作だ」と反発しつつも、地方選の疑惑については蔡政権に「早期の真相究明」を求めるほかは打つ手のない状態だった。

 だが、台北地方検察署は2日、昨年9月の台風21号で関西国際空港に多数の旅行客が取り残され、台北駐大阪経済文化弁事処(領事館)の処長が自殺した問題で、大阪弁事処を批判するネットの書き込みを組織的に行ったとして、公務員侮辱罪で著名なネットユーザーの女性らを起訴した。

 女性は謝長廷駐日代表(大使)が08年の総統選で民進党候補として出馬した際、選挙対策本部でネット部門の責任者をしており、国民党は書き込みは謝氏をかばうための策略だと主張。女性が書き込み担当者に月額1万台湾元(約3万5000円)を支払っていたことなどを理由に、中国ではなく「民進党が網軍を養成していた」と批判を強めている。

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