海外情勢

あす英総選挙 旗色悪いEU残留支持派、野党結束にほころび

 英国で12日、欧州連合(EU)からの離脱を争点にした総選挙が行われる。国民投票でEU離脱を決定してから3年半の間、一部市民は離脱阻止に向け奮闘を続けてきたが、ジョンソン首相率いる保守党は過半数をうかがう情勢で、EU残留支持派の旗色は悪い。

 保守党が過半数公算

 「これでEU残留の目は消える」。英国とEUの関係を研究する独立グループ「変わりゆく欧州の中の英国」のディレクターを務める英キングス・カレッジのアナンド・メノン教授はこう話し、「保守党がたとえ1議席でも半数を上回れば、EU離脱は実現する」と指摘した。

 主要政党のうちEU離脱の阻止を唯一、公約に掲げる自由民主党(LDP)は、残留を支持する有権者の半数も取り込めていない。国民投票の再実施を目指して運動を展開するはずだった主要組織「ピープルズ・ボート」は方針の不一致で空中分解し、最大野党・労働党のコービン党首は2回目の国民投票を望むものの、その際には「中立を貫く」とあいまいな言い回しに終始している。

 対照的に、国民投票でEU離脱派を牽引(けんいん)したジョンソン首相は「離脱強硬派の票を割る可能性がある」とみられたブレグジット党のナイジェル・ファラージュ党首の影響力をそぐことに成功。

 さらに労働党の地盤でもEU離脱支持者からの支持を浸透させつつある。各種の世論調査は総選挙で保守党が過半数を得る公算が大きいことを示す。そうなればジョンソン首相は、自身のEU離脱案を議会で通すことが可能になる。

 調査機関ナットセンの調査によると、現在の英国ではEU残留を希望する有権者の方が多い。しかし、EU残留派の野党が離脱中止か国民投票の再実施かなど方針を一本化できていないことに加え、超党派の連合を組むことにも失敗する中、残留派の投票先は割れる見込みだ。

 LDPの窮状は残留派の苦戦ぶりを象徴している。残留派の高い期待を背負って7月に党首に就いたスウィンソン氏は、離脱かEU残留かを問う「2度目の国民投票実施」という従来の党の方針を改め、離脱阻止の公約へとかじを切った。

 労働党との違いを打ち出す狙いがあったとみられるが、この方針は「非民主的だ」として、特に同党が議席回復を目指すイングランド南西部などで裏目に出た。ある調査によると、スウィンソン氏は、表に出るほど好感度を落としているという。

 最大野党は中立姿勢

 さらに、残留派にとっての最大の障害は、最大野党の労働党の党内が離脱派と残留派で分かれていることだ。労働党は現在、離脱方針の是非を問う国民投票の再実施を目指しており、影の内閣のダイアン・アボット内相などの同党の主要議員は国民投票が再度実施された場合、EU残留を推進すると表明。一方、EU懐疑派のコービン党首は22日のBBCの討論番組で、離脱でも残留でもない「中立的な立場」を取ると明言した。

 コービン氏がLDPとの選挙協力を拒んだことも野党陣営に不利に働いている可能性がある。保守党に勝てる見込みのある選挙区で、親EU寄りの候補を対抗馬に立てる調整を労働党が拒否した結果、EU離脱に反対する有権者の票が割れることも考えられる。

 離脱反対派向けに「戦略的投票」を指南するウェブサイトも数多く存在するが、どの候補に投票するのがベストか常に意見が一致しているわけではなく、このことも有権者の選択を一層難しくしている。

 メノン教授は「労働党中心の少数党政府の樹立が離脱阻止の唯一の手段だが、現時点で労働党が議席の過半数を取得する道筋は見通せない。残留への道は険しい」と話した。(ブルームバーグ Alex Morales)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus