山本隆三の快刀乱麻

天然ガスにも吹き始めた逆風 融資中止提案で波紋も (1/2ページ)

 金融はSDGsに寄与しているか

 東京、大阪のような大都市に加え、地方都市でもSDGs(持続可能な開発目標)のバッジを着けた人をよく見かけるようになった。円の周りを17色に色分けした円形のバッジと言えば、思い当たる人も多いだろう。

 SDGsには、世界が2030年までに達成すべき17の目標が示されている。持続可能な世界を実現するために国連が定めた目標で、「貧困をなくそう」などの目標とともに、環境、気候変動問題への対応も含まれている。目標13には「気候変動に具体的な対策を」、目標14には「海の豊かさを守ろう」、目標15には「陸の豊かさも守ろう」とある。

 日本政府も今年6月、拡大版「SDGsアクションプラン2019」を発表している。その中で「SDGsを原動力とした地方創生、強靭(きょうじん)かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり」と、地方創生にSDGsを生かす考えも示されている。そのせいか、地銀グループなどの地元企業の方々もSDGsのバッジを着けていることが多い気がする。

 金融の世界では、SDGsと同じ視点で、環境、社会、企業統治に優れた企業を選択するESG投資が推進され、投資額は急増している。ESG投資を行う機関投資家、年金基金の中には、タバコ、ギャンブル、アルコールなどに関連する企業を投資対象から外すところもある。

 融資中止提案で波紋

 また、石炭の採掘、石炭火力発電に関連する企業を、気候変動対策の観点から投資対象から外す投資家も出ている。国際金融機関では、世界銀行が13年に石炭関連の企業や事業への融資を行わない方針を打ち出し、欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)が後に続いた。EIBの総裁は、天然ガス関連の企業や事業にも融資を行うべきではないとの方針を打ち出し、欧州の一部の国との間で軋轢(あつれき)が生じている。

 金融機関が、気候変動対策の観点から石炭、天然ガス関連に融資を行わないことは持続可能な発展に寄与するのだろうか。

 世銀は13年、最貧国を除き、石炭火力発電事業への融資を行わない方針を決めた。温室効果ガスの排出量が化石燃料の中で最も多い石炭の利用を続けることは、望ましくないと判断したからだ。石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量は日本の場合、石油火力の約3割増し、液化天然ガス(LNG)火力の約6割増しだ。

 欧州の国際銀行や民間金融機関も世銀の後に続き、15年には、欧州の保険会社であるアクサとアリアンツが石炭関連資産への投資だけでなく保険引き受けも行わないと発表した。

 ノルウェー政府は、世界第2位の資産規模(1兆ドル)といわれる政府年金基金の運用資金を石炭関連産業に投資しないよう年金ファンド法を改正した。基金を管理するノルウェー中央銀行は、収入の30%以上を石炭関連事業から得ている企業を投資先から除外することを決め、59のリストを発表した。リストには、日本の電力会社5社も含まれていた。

 石炭関連に投融資を行わない方針は、日本の金融機関にも広がっている。18年5月、第一生命保険が海外での石炭火力建設事業に投融資を行わない方針を発表したのに続き、日本生命保険、明治安田生命保険、さらには三井住友銀行などが相次いで石炭火力建設に投融資を行わない方針を発表した。ただ、石炭火力の中でも発電効率に優れ、CO2発生量が相対的に少ない超々臨界圧発電方式を除外したり、政府系金融機関が融資する案件を例外としたりするなど、細かい対応は金融機関によって異なっている。

 機関投資家や金融機関が、石炭関連への投融資を避けるようになったのは、気候変動対策が今後推進されると石炭関連事業への規制が強まる可能性があり、将来廃止を迫られる可能性があるからだろう。石炭に関する政府の対応などを予測することは難しく、同事業の不透明感、不確実性が高い以上、投融資に慎重になるのはリスク回避の観点から当然ともいえるが、価格競争力があり安定した供給国が多い石炭に依然、依存せざるを得ない国は多くある。

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