海外情勢

東ティモール国境往来活発 ルピア安でインドネシアへの買い物増加

 東南アジアの小国、東ティモールは8月、インドネシアからの独立を決めた住民投票から20年を迎えた。当時多くの難民が殺到し、混乱した国境付近では往来や物流が活発化。買い物や観光のため気軽にインドネシアを行き来する東ティモール人が増えている。

 ティモール島を東西に分ける国境から車で西に約1時間。インドネシア側の主要都市ベル県アタンブアは東ティモール人でにぎわい、公用語のテトゥン語が通じていた。

 両替所で米ドルを現地通貨ルピアに替えていた自営業のニコラウさんは「バイクの修理用部品を買いに来た。近くて安い」と話す。旅行中の公務員、ロシンハさんは「布が7割の値段で買える」と喜んでいた。

 インドネシア側入管によると、2017年に東ティモールとの国境を陸路で往来した外国人は約10万9000人だったが、18年は約17万人に増えた。

 東ティモールは多くの物資を輸入に頼り、物価が高い。以前からインドネシア側に買い物に出掛ける人は多かったが、近年ルピアが対ドルで下落し、自国通貨にドルを使う東ティモール人の往来を後押しした。

 東ティモール政府によると、インドネシアからの輸入総額は12年ごろから急増。18年は約1億6000万ドル(約173億9680万円)と全体の約3割を占め、国別で第1位が続く。

 東ティモールでは1974年、旧宗主国ポルトガルが撤退を決めた後、インドネシアが侵攻、76年に併合を宣言した。99年の住民投票で独立派が圧勝したが、併合派民兵による騒乱が起きた。その爪痕は今も残る。

 アタンブアの一角では併合派だった東ティモール出身者らが木の板でできた質素な家で暮らしていた。元民兵のウィドさんは「故郷には戻れない。ここで死ぬことになるだろう」と話す。

 ウィリーブロドゥス県知事によると、県の人口約22万人のうち、東ティモール出身者は3万~4万人に上る。知事は「もはや政治的なわだかまりを持つべきではない。経済交流で互いに助け合いたい」と語った。(アタンブア 共同)

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