海外情勢

インフレ目標は踏み込めず ECB戦略検証 2%に変更の可能性

 欧州中央銀行(ECB)当局者らは予定している戦略検証で、インフレ目標を微調整する見込みだが、それ以上に踏み込むのは難しいだろうと、事情を知る複数の当局者が述べた。

 16年ぶりの根本的な検証で、ECBはインフレ目標を2%と、現在の「2%弱」から変更する可能性がある。2%弱ではインフレが弱過ぎると懸念する声が一部の当局者にあるためだ。

 しかし、物価安定の目安と達成について、より急進的な変更に至ることは恐らくないだろうと、非公開の議論だとして関係者らが匿名を条件に語った。

 引き締め圧力に先手

 中期的なインフレ目標を2%に設定すれば、インフレ率が1.5%を超えた時点ですぐさま引き締め開始の圧力が生じることはなくなる。また、インフレがしばらくの間、目標を上回る余地を作ることで、実際の物価上昇を生み出すための重要な要素であるインフレ期待を押し上げることができると、関係者の一人が述べた。ECB報道官はコメントを控えた。

 チーフエコノミストのレーン理事は、ラガルド新総裁の下で近く発表が見込まれる戦略検証について、結果を予測しようとするのは「やめた方がいい」と語った。それでも内部から早々に観測が出るのは、ユーロ圏経済を形づくる力とそこで何をなすべきかをめぐり、共通認識のなさを浮き彫りにする。

 債券購入やマイナス金利を含む8年にわたる取り組みにもかかわらず、ドラギ前総裁はインフレを回復させることができなかった。主要な問題は、インフレや、失業率と賃金上昇率の関係を示すフィリップス曲線などのインフレ関連のモデルが、今やどのように機能しているのか誰も確信がないことだと当局者らは言う。そのため、戦略検証はインフレがなぜこれほど長期にわたって低水準にとどまっているのかに関するこれまでの研究に基づいて行われることになるだろう。

 グローバル化とテクノロジーが物価に下押し圧力をかけているというのが共通認識だが、ECBの作業グループは2017年に、世界的なショックや商品価格などの循環的要因がより大きな役割を果たしていることを発見した。報告書は、量的緩和などのECB政策がインフレ期待を支えるのに役立つと結論付けた。

 許容範囲で複数意見

 インフレ目標について、オーストリア中銀のホルツマン総裁は低くしてしまえばいいという考えを示している。そうすれば目標達成が容易になり、金融緩和の必要性が減る。だが、この見解はECB中枢部には受け入れられていない。

 インフレ目標の上下にある程度の許容範囲を設けることについても、さまざまな意見がある。ドイツ連邦銀行のバイトマン総裁のようなタカ派メンバーは明確な必要性がみられないという考えだ。オランダ中銀のクノット総裁は目標の上下に幅を持たせるバンドを提案した。

 レーン理事は「対称性」を主張する。これは弱いインフレの押し上げと、強過ぎる物価上昇の抑制とを等しく重視することを意味する。インフレ率が「目標を下回ることに、上回ることと同じくらい留意している」と同理事は語った。

 次回の政策決定は12日。ラガルド総裁はこの会合で政策検証開始を宣言するかもしれないが、ECBと各国中銀のスタッフは既にあり得る選択肢について、非公式に作業を開始している。(ブルームバーグ Paul Gordon、Yuko Takeo)

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