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20年度与党税制改正大綱 企業強化中心、効果に時間

 12日決定した2020年度与党税制改正大綱は、企業の内部留保をM&A(企業の合併・買収)などの投資につなげる新税制をはじめ、企業の成長力を高めるメニューが中心となった。ただ、実際にイノベーション(技術革新)や収益拡大を生み、日本経済全体を強化するには時間がかかる。20年は家計の負担となる増税も多く、景気腰折れの回避へ目配りが求められる。

 「企業に内部留保が積み上がったが、完全には『貯蓄から投資へ』というマインドセット(考え方)ができていない」。税制改正の本格議論を始めた11月21日の自民党税制調査会の総会後、甘利明会長はこう語り、企業の投資を後押しする考えを示した。

 実際、今回目玉となったのは、企業関連の税制改正だ。

 たとえば大企業が、設立10年未満で非上場のベンチャー企業に1億円以上を出資した際、出資額の25%を課税所得から控除することにした。ベンチャーの革新技術を大企業が取り込み、ビジネス化するのを促す狙いだ。一方で「アメ」だけでなく、設備投資に消極的な企業に対し税優遇の適用を厳しくする「ムチ」の施策も盛り込んだ。

 また、「新たな時代のインフラ」(甘利氏)である第5世代(5G)移動通信システムの普及も急ぎ、基地局を前倒しして整備する携帯電話の事業者に税優遇を行うことにした。

 ただ、企業がベンチャーの技術を取り込むなどして、実際の製品化や収益アップ、賃上げなどにつなげるには時間がかかる。今回の企業対象の税優遇に「即効性がある」とは言い難い。全ての企業が効果を上げられるかも確実ではない。

 足元ではむしろ、家計を取り巻く不安が強まっている。今年10月には消費税率が10%に上がり、同月の家計調査の1世帯(2人以上)当たりの消費支出は前年同月比5.1%減と大きく下落した。今後は世界経済の不透明感や、来年夏の東京五輪終了後の景気落ち込みも不安材料となる。

 だが、20年度税制改正大綱には、家計負担を軽くする大きな減税措置は盛り込まれていない。むしろ各種の税負担の増加が予定されており、1月からは年収850万円超の会社員の所得税を増税。9月には、消費税増税対策として導入された、自動車取得に関する減税措置が終わり、10月は第3のビールやワインが増税される。

 こうした税負担の増加は、個人の消費活動を冷やすことになりかねない。政府は今月、事業規模26兆円の経済対策をまとめたばかりだが、財政とのバランスも考慮しながら、景気の下支えに向け、施策を効果的に打ち出していく必要がある。 (山口暢彦)

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