海外情勢

貿易合意も米中対立解消遠く 引き続き関税が経済下押し

 米中両国が貿易協議の「第1段階」合意に達し、経済大国同士が追加関税をかけ合う貿易摩擦が、一段と激化する事態は当面回避された。ただ、米政権は引き続き大部分の対中制裁関税を維持するため、「貿易戦争」の暗雲が世界経済を下押しする構図は続く。

 両国政府が13日に発表した貿易合意について、「休戦と摩擦激化を繰り返す今まで何度もみた光景」(米通商専門家)との冷めた声がさっそく出ている。

 米通商代表部(USTR)は、中国が大量の米農産品購入を約束したと説明する。だが、中国側の発表は購入規模の数値などに触れておらず、「約束が守られるのか」という疑念や、「大量すぎて農家の生産が間に合わない」との問題が指摘されている。

 米産業界が重視する中国の知的財産権保護などの構造改革が、どこまで進むかは不透明だ。合意文書は作成中で詳細は明らかになっていない。

 来年秋の大統領選挙に向け、トランプ米大統領は農家の支持を重視している。中国の年500億ドル(約5兆5000億円)に達する米農産品購入を成果として訴えることを優先し、構造改革を確約させることなく合意を急いだとの批判もある。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のケネディ氏は、「短期的には中国と習近平国家主席が明白な勝者だ」と指摘。中国が大きな譲歩をすることなく、産業補助金を注ぎ込む重商主義的な経済モデルを温存することに成功したと分析している。

 米国は15日に予定した新たな対中制裁関税を取りやめたが、計3700億ドル分に上る中国産品への追加関税は、一部を軽減したものの撤廃しなかった。トランプ氏は「中国が撤廃を望んでおり、第2段階の合意に向けて(交渉材料として)活用する」と話した。

 米中が追加関税をかけ合い、投資低迷などを招く貿易摩擦がさらに長期化し、企業の事業環境が見通しにくい状況が続くことになった。消費税率引き上げ後の日本経済にとっても懸念材料となりそうだ。(ワシントン 塩原永久)

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