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中国GDP上方修正、その信憑性 (1/2ページ)

 中国政府は、最新の経済センサス調査結果に基づいて、2018年の名目国内総生産(GDP)を従来発表値を2.1%上回る91兆9300億元(約1419兆4000億円)とした。一般的に一度発表したGDP値の更新は多くの国で行われており、中国のGDP見直しも5年に1度の経済センサス調査の結果を受けたものだ。通常GDPの見直しでは、当然ながら上方・下方双方の修正が起こり得るが、中国が過去3回の経済センサス調査の結果を踏まえて行った修正は、いずれも上方修正となっている。(三菱総合研究所・猪瀬淳也)

 平均1.7%「上げ底」

 中国の統計の話になると、ほぼ必ずと言っていいほど話題に上るのはその信憑(しんぴょう)性だ。「李克強指数」に代表されるように、政府が公表するGDP以外の指標で実体経済の成長率を計測する取り組みは多く行われている。李克強指数は、中国の指標の中でも比較的操作が困難とされる(1)中長期貸出残高(2)電力消費量(3)鉄道貨物輸送量の前年比伸び率を定のウエートで合成した指数である。李克強指数にはいくつかの改良版があるが、英国のコンサルティング企業であるファソムが公表する改良版(CMI2.0)では、18年初には政府が公表するGDPと同程度の6%台後半となったものの、足元で4%台前半まで下がっている。

 香港中文大学のチェン氏らは、独自に中国のGDPの検証を行い、10~16年のGDPの成長率が平均1.7%ポイント高く見積もられていると指摘した。チェン氏らは付加価値税(増値税)のデータを用いて工業、建設、卸・小売りの生産活動を分析しており、李克強指数と同様、GDPの三面等価のうち生産側からGDPを推計したものだ。この分析期間はあくまで16年までであるが、仮に同程度の過剰見積もりが現在まで続いていたとすると、19年第3四半期の成長率は4.3%程度となりファソムの推計値と一致する。

 また、サンフランシスコ連銀の研究者であるフェルナルド氏らは、中国との貿易相手国が開示する貿易統計を用いて中国の経済活動を計測する指標を提案している。具体的には、上述の対中輸出額に加え、中国の消費者信頼感指数、電力消費量、固定資産投資額、建築着工床面積、鉱工業生産指数、鉄道輸送量、小売売上高の8指標をウエート付けした指標が中国の経済活動を表すとしている。論文中では明白に現在のGDP成長率がどう推計されるかは計算されていないが、文中に記載されている数値などを用いると、上記の2指標と同様、足元の成長率は4%台と見積もることができる。

 リーマンを境に変化

 香港中文大学およびサンフランシスコ連銀の分析の双方は、GDPのトレンドが08年を境に大きく変わった点を指摘している。リーマン・ショック前後で政府内にどのような変化が起こったかを想像することは難しいが、リーマン・ショックによる経済の落ち込みを、計数を操作することで限定的に見せ、その当時の慣習が現在にも引き継がれていると見ることもできる。

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