海外情勢

電気飛行機時代幕開け、最大の利点は運用コストの安さ 「空飛ぶタクシー」試験も

 水上飛行機を運航するカナダのハーバー・エアが10日、完全電動商用機の試験飛行に世界で初めて成功した。航空機による大気汚染の問題に対応し、化石燃料依存からの脱却を目指す航空業界の取り組みに弾みが付きそうだ。

 2年で認可取得計画

 ハーバー・エアの電動商用機の試験飛行は同国西部ブリティッシュコロンビア州リッチモンドのフレイザー川沿いで行われた。同機は客席数6人の「デ・ハビランドDHC-2ビーバー」をベースにした試作機で、米マグニクス製の電動モーターを搭載している。

 ハーバー・エアは現在、53機の機材で12路線を運航している。同社は電動商用機の実用化に向け、2年以内に規制当局からの認可を得る計画だ。

 試験飛行は5分で終了したものの、化石燃料依存からの脱却へのプロセスで画期的な一歩といえる。航空産業専門のコンサルタント、ロバート・マン氏は「今回の試験は過去に行われたどの電動航空機の試験よりも本格的な実証実験だ」と指摘する。

 ただ、大型機の完全電動化には小型機以上に時間がかかる。現時点の技術では少なくとも10年は必要とみられている。同社はまず、従来型の内燃機関と電気モーターを合わせたハイブリッド航空機や小型機の電動化から着手するとみられる。

 世界で開発加速

 航空機電動化の動きは世界で加速している。コンサルティング企業のローランド・ベルガーによると、現在世界で実施されている航空機の電動化プロジェクトは170を超え、2018年4月以来で50%増加している。電動化技術の導入は大型機よりも電力需要の少ない「空飛ぶタクシー」などの分野で導入が進んでいる。

 米配車大手ウーバー・テクノロジーズは来年にもダラス、ロサンゼルス、メルボルンなどの主要都市で電動式の「空飛ぶタクシー」の試験を開始する計画だ。イスラエルの新興企業エビエーションは20年の夏にマグニクスの電動モーターを搭載した電動航空機「アリス」の試験飛行を予定している。

 ドイツの電機大手シーメンスと欧州航空機大手エアバス、英航空機エンジン大手ロールス・ロイスの3社は協力して「E-Fan X」と呼ぶハイブリッド電動推進システムの開発を進めている。英格安航空大手イージージェットは米新興企業ライト・エレクトリックと提携し、短距離路線向けに電動方式の旅客機を30年までに開発する方針だ。

 電動化の最大の利点は運用コストの安さだ。マグニクスのガンザースキー最高経営責任者(CEO)によると、ハーバー・エアの機材の100マイル当たり燃料費は内燃機関搭載機が300~400ドルなのに対し、同型の電動航空機は4~10ドルという。

 半面、電動機運航に向けた課題も多い。一つはインフラ面の問題だ。現在、主要空港の多くは急速充電スタンドを配備していない。ガンザースキーCEOによると、マグニクスとハーバー・エアは独自に再生可能エネルギー由来の充電ステーション整備を求められる可能性がある。

 一方、航空機が排出する二酸化炭素の問題をめぐり、航空業界は、規制が航空分野に厳しすぎると不満を募らせている。欧州の主要航空会社は10日、欧州連合(EU)が計画する航空燃料への課税に抗議。低炭素燃料や電動機への投資などの政策がより有効だと主張している。(ブルームバーグ Josh Petri)

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