海外情勢

米、摩擦コスト埋められず 対中「第1段階」合意の成果不透明

 トランプ米大統領は中国との間で取りまとめた第1段階の貿易合意を実績の一つに掲げ、来年の大統領選で再選を果たしたい考えだ。大統領は中国が今後2年間に米国からの輸入を2000億ドル(約21兆9000億円)増やすことを約束したとしている。

 しかし、中国が実際にこのような大盤振る舞いに動いたとしても、この合意を通じて米中が一部打開を図った貿易摩擦の経済的コストを埋め合わせすることはできそうにない。

 米中の経済的対立は解消に程遠く、その正確な損失推計を特定するのは難しい。関税の直接的なコストに加え、不確実性の高まりによる企業景況感への影響など、実体のないものも含まれるからだ。

 米中による関税合戦とそれに伴う不確実性の高まりのコストについて、複数のエコノミストは今年だけで実質国内総生産(GDP)の0.3~0.7%に相当する生産の損失があったと推計する。さらに、企業投資は低迷し、不透明感も払拭(ふっしょく)されておらず、まだ撤回されないままの関税なども考慮すると、こうした影響は将来の成長にも影を落として何年も続くと多くのエコノミストは予想する。

 1%未満の損失はそれほど大きくないと見えるかもしれないが、米経済規模を踏まえれば極めて大きな数字となる。ブルームバーグ・エコノミクスは、米国のGDPが今年これまでに被った損失を1340億ドル相当と試算、これが2020年末までには計3160億ドルに膨らむと推計している。

 ニューヨーク連銀やプリンストン大学、コロンビア大学の研究者の共同調査の推計では、最新の合意にもかかわらず撤回されたり引き下げられたりされずに残る関税の経済的コストは1世帯当たり年間831ドルで、米経済全体では年間1060億ドル余りに上る。

 これだけで、トランプ政権の通商チームが交渉の末にまとめた中国による米国からの輸入拡大分を上回る損失となる計算だ。

 国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたモーリス・オブストフェルド氏は、中国による輸入拡大によって「全てが始まる前の地点に戻るだけだ。何が得られ、経済的コストを負うだけの価値があったのか問い掛ける必要がある」と指摘した。(ブルームバーグ Shawn Donnan、Reade Pickert)

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