海外情勢

イスラエル、中国と来年にもFTA 中東地域の米中勢力図一変も

 米中間の覇権争いが激化する中、米国の中東での最大の同盟国であるイスラエルが2020年にも中国との間で自由貿易協定(FTA)を締結する見通しになった。関係者が明らかにした。実現すれば、中国が中東・欧州で影響力を拡大するための一歩となる。シリア駐留軍撤収で米国の存在感が薄れる中、中東での米中の勢力図も変化しそうだ。

 対米輸出は年々減少

 中国とイスラエルのFTA交渉は16年から続いており、最新の交渉は約1カ月前に行われた。両国のFTA締結に向けた動きは、両国の蜜月関係を浮き彫りにしている。

 ブルームバーグのまとめによると、米国はイスラエルとの貿易総額で中国をなお上回っているものの、イスラエルからの対米輸出は15年以来、年々減少。この一方、同期のイスラエルからの対中輸出は7割近く増加した。

 中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を進める上で中東を欧州・アフリカ市場進出のための足掛かりとして重視。中東との関係強化の軸足を経済に置いており、今や中東最大の投資国だ。米中対立が激化する中、アラブ首長国連邦(UAE)など中東の親米国が中国と敵対関係になることを避ける狙いもある。

 ただ、同地域の米国の軍事活動を阻害しないよう配慮している。シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)はリポートで「中国は米国が主導する中東での安全保障構造へ挑戦することや、同地域の政治で主要な役割を果たすことに対して強い意欲を示していない」と指摘した。

 それでも米国は中国の動きを警戒しており、中国、イスラエル間の経済関係強化は波紋を広げることになりそうだ。米国はイスラエルが中国の投資に対して十分な調査を行っているかどうか、第5世代(5G)移動通信システムのインフラ整備をめぐる中国の影響を抑制しているかについて神経をとがらせている。

 また、米国海軍第6艦隊が寄港することのあるハイファ港をめぐり、中国国営企業が同港に関与することについて懸念を表明している。

 米中の板挟みとなるイスラエルは難しい対応を迫られている。テルアビブ大学の国家安全保障研究所のイスラエル・中国プログラムの責任者であるアサフ・オリオン氏は「中国との貿易を続ける一方で、米国との同盟関係を裏切ることがないよう、適切な線引きをしなければならない」と説明した。

 バランス取りに苦慮

 米国の圧力を受け、イスラエルは安全保障の観点から外国企業による投資の可否を審査する諮問委員会を設置したばかりだ。しかし、その一方で中国とのFTA締結に動いている事実は、米国と安全保障をめぐる懸念を共有しつつも、中国との通商関係を強化するというバランス取りに苦慮している姿勢を浮き彫りしている。

 こうした中でイスラエルが計画通り対中FTAを締結できるかどうかは予断を許さない。イスラエル経済産業省のコーエン外国貿易局長は「対中交渉はいわば“ハーフタイム”にあり、米中双方との市場アクセス拡大に注力している。わが国は象同士のけんかを見ているネズミのようなものだ」と話した。(ブルームバーグ Ivan Levingston)

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