海外情勢

世界に広がる若者の怒りの声 格差拡大で暴動、テロのリスク高まる (1/2ページ)

和田大樹
和田大樹

 早いことに2019年が終わろうとしている。今年も世界ではさまざまなことがあったが、テロリズムを中心とする政治的暴力を研究する筆者としては、3月のニュージーランドモスク襲撃テロ、4月のスリランカ同時多発テロは大きな衝撃となった。今年の国際テロ情勢においては、暴力的白人至上主義のグローバルな展開とイスラム国のバグダディ指導者の死亡が大きな特徴だろう。政治的暴力という全体からみると、世界各地から聞こえる若者の不満・怒りの声も見逃せず、今年の流れは来年も続きそうだ。

 香港では6月以降、逃亡犯条例改正案が引き金となり、市民による大規模な抗議デモだけでなく、警官隊と暴徒化した若者との衝突が続いている。香港政府は10月、一連の抗議デモの引き金となった逃亡犯条例改正案の撤回を発表したが、若者たちは「5大要求」全ての解決を求め、一時大学に立て籠もるなどし、多くの逮捕者と負傷者を出す事態となった。11月下旬には区議会選挙も平和裏に行われたが、その後も80万人規模の抗議デモが行われるなど、両者の間で緊張が続いている。

 また、中東のイラクやイランでは、多数の犠牲者を出す事態になっている。10月以降、イラクでは、政府の汚職や社会経済政策に不満を持つ市民による抗議デモが、首都バグダッドや南部の各都市に拡大した。各地で治安当局と衝突する事態に発展し、これまでに400人以上が犠牲になったともいわれる。アブドルマハディ首相の退陣は既にイラク国会で承認されたが、若者たちはイランがイラク政府を背後で支援しているとして、国内にあるイラン領事館を相次いで襲撃するなど、イラクの抗議デモは“反政府”から“反イラン”に変化しているようにも感じられる。以前のイラクでの反政府デモというと、少数派スンニ派と多数派シーア派との宗派闘争の様相が強かったが、今日イラクで起きているのは、シーア派住民によるシーア派主導の政権への反発である。

 そのイランでも、11月中旬以降、政府によるガソリン価格の値上げ決定に端を発し、各地で若者らによる反政府デモが発生している。デモ隊は各地のガソリンスタンドや銀行などを次々と襲撃し、その一部は治安当局と激しく衝突するなどしている。これまでの死者は200人以上、逮捕者は1000人以上ともいわれる。

 一方、南米チリでも10月下旬以降、政府の地下鉄運賃の値上げ決定に反対する抗議デモが各地に拡大した。抗議デモに参加する若者らは首都サンティアゴなど各地で治安当局と激しく衝突し、これまでに20人以上が死亡、500人以上が負傷する事態となっている。一時チリでは非常事態宣言と夜間外出禁止令が発令され、APECやCOP25といった国際行事の開催が延期されることになった。既にピニェラ大統領は、運賃値上げの撤回を発表しているが、経済格差や教育改革などを訴える若者たちの不満は全く解消していない。

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