山本隆三の快刀乱麻

着実な歩みか、理想追求か ノルウェー・韓国の水素社会推進 (1/2ページ)

 ノルウェー観光の目玉と言えば、オーロラと氷河の浸食作用で作られた入江(フィヨルド)だろう。同国の海岸線には高い山に囲まれたフィヨルドが多く、水深もあるため橋の建設が難しく、フェリーによる往来が多く行われている。

 ノルウェーのフェリーの大半は、フィヨルドを横切るだけの短距離の運航で、電動化に適している。船舶の電動化には、重量のある蓄電池を航続距離に合わせて大量に搭載する必要があり、充電時間も長くなることから、航続距離の長い航路に電動化は適していない。しかし、短距離であれば可能だ。

 温暖化対策に熱心なノルウェー政府は2011年、フィヨルドに面した2つの村(距離5.7キロメートル)の間で電動フェリーを運航する企業を入札で募った。その結果、最初の電動フェリーが15年に導入された。フェリーは長さ80メートル、幅21メートルで、乗客360人、車120台を積載できる。重さ10トンの蓄電池(1000キロワット時)が使われている。軽量化のため、船体はアルミ製だ。

 ノルウェーは電力供給のほとんどを水力発電で行っていることから電気料金が安く、電動化により運航費用が低減された。さらに、振動、騒音が減少し、維持費が削減されるなどのメリットも得られた。その結果、商業化ベースでの電動フェリーの導入が進み、18年に3隻が就航した。その後、他国にもフェリーを中心に電動船の導入が広がり、現在約80隻が建造中となっている。

 ただ、航続距離には限度があり、短距離以外の航路での利用は困難だ。さらに、大型化や高速化も難しい。この欠点を克服するため、ノルウェー政府はフェリーへの燃料電池の適用を考え、17年に燃料電池フェリーの入札も実施。21年には、世界初の燃料電池フェリーが就航予定になっている。燃料電池フェリーで解決すべき点は燃料供給だ。ノルウェーには、船舶に供給可能な大規模水素供給施設はまだない。

 事故発生、障害ならず

 船舶からの二酸化炭素(CO2)排出量削減に力を入れるノルウェーは、自動車部門でも排出ゼロを目指している。欧州では、独英仏などが自動車部門からの排出量ゼロを目指し、将来的にガソリン、ディーゼルエンジンの自動車販売を禁止することを決めている。英仏は40年、ドイツは30年を目標年にしているが、ノルウェーは25年までに販売を禁止することを決定済みだ。高速道路の使用料金や道路税も内燃機関自動車の負担が重くなっており、電気自動車(EV)などの販売が有利になる政策を採用している。

 こうした政策支援に加え、欧州内では電気料金が相対的に安いこともあり、ノルウェーは新車販売台数に占めるEVの割合が高く、世界一のEV導入国となっている。

 同国の18年末のバッテリー稼働車とプラグインハイブリッド車(PHEV)の台数は24.9万台で、中国、米国、日本に次ぐ世界第4位。しかし、18年のEV販売台数は7.2万台で、新車販売に占める割合は46.4%と、世界一のシェアとなっている。

 ノルウェーの19年8月の新車販売に占めるEVのシェアは49%に達している。また、燃料電池車(FCV)の導入も進めており、ノルウェー国内に3カ所の自動車用水素ステーションが設置された。

 ところが19年6月、首都・オスロ近郊の水素ステーションで爆発事故があり、近くを車で走行中の2人が軽傷を負った。ノルウェーでは同月時点で、約160台のFCVが登録されていたが、この事故で全ての水素ステーションが閉鎖され、一時、水素の充填(じゅうてん)ができなくなった。

 ノルウェーでは19年1~6月までに、トヨタ自動車のFCV「ミライ」が8台、韓国ヒュンダイのFCVが21台販売されていたが、両社ともこの事故を受けてFCVの販売を一時中止した。

 その後、事故は、水素ステーションで使用していたバルブが不良品だったため水素が漏れ出し、着火したことが原因と判明。水素社会の推進に大きな障害にはならなかった。同様の事故は韓国でも発生し、死者が出たことから反対運動も起きた。しかし、韓国政府は、事故を乗り越え水素社会を推進する意向を明らかにしている。

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