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メキシコ、最低賃金引き上げで雇用悪化

 メキシコの雇用が悪化し、経済を下押ししている。政府は2017年以降、労働者の購買力を向上させるため、最低賃金の上昇率を引き上げてきた。オブラドール政権の19年の最低賃金改定では、前年比上昇率が16%と、3%の消費者物価上昇率を大きく上回るペースで拡大。その上、米国国境に近い地域では特別最低賃金が設定され、19年は前年の2倍となった。政府は20年も全国最低賃金の20%引き上げを目指す。

 政府は、最低賃金の引き上げで家計消費が増大し経済が活性化すると見込んでいたが、現実には消費を下押しする結果となった。企業業績が悪化し、労働者の解雇が増加したほか、米国国境地域で権利意識の高まった労働者がさらなる賃金改善を目指したストライキを起こし、製造業の生産も停滞した。19年7~9月期の実質経済成長率は前年同期比0.3%減と世界経済減速の影響も加わり、2期連続でマイナスとなっている。

 失業率の悪化は一見小幅だが、雇用の実態はより深刻である。メキシコでは失業保険制度が整備されておらず、失業者は次の就職を急がざるを得ない。そのため、インフォーマル(非公式)部門への再就職を決める労働者も多く、その割合は再び上昇している。

 引き上げ後でもメキシコの最低賃金は日給102.68ペソ(約5.3ドル、約550円)と、他の経済協力開発機構(OECD)諸国に比べて低水準にとどまる。政権が貧困層を支持基盤とすることから最低賃金の引き上げは続くとみられ、今後も雇用の悪化やこれによる個人消費の低迷が懸念される。(編集協力=日本政策投資銀行)

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