海外情勢

EU、気候中立に1兆ユーロ 投資10年計画 「米国不在」分野で主導権狙う

 欧州連合(EU)の行政執行機関の欧州委員会は14日、2050年までにEU域内を温室効果ガスの正味排出量を実質ゼロとする気候中立目標の実現に向けた「持続可能な欧州に向けた投資計画」を発表した。今後10年間で官民合わせて少なくとも1兆ユーロ(約122兆円)を投資する。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を宣言した米国不在のこの分野で主導権を握り、雇用や経済成長に結び付けたい考えだ。

 予算拠出比25%以上

 投資計画はフォンデアライエン欧州委員長が掲げる欧州グリーンディールを資金面で支える柱に当たる。クリーンテクノロジーへの支出を促し、脱化石燃料への取り組み支援に向け、来年までに関連する国家補助金規制を改定する方針だ。同計画の影響を受ける分野は航空、鉄道、地域熱供給、発電など多岐にわたる。

 欧州委のドンブロウスキス副委員長は「投資をする際は『グリーン(環境)』面を考慮する必要があるという明確な意図を各国の諸機関や企業、投資家に発信している。グリーンディールを踏まえ、環境保全に配慮した公的調達の法整備や国家補助金規制の改定を提案する所存だ」と語った。

 欧州は今年、気候中立達成に向けた移行に着手する。自動車や化学など複数業界を対象にした温室効果ガス排出規制の厳格化やエネルギー税見直しに加え、環境保全型農業への取り組み、企業を対象とした新たな国家補助金規制の制定を進める。場合によっては環境対策を反映した輸入税導入も検討する。

 ただ、気候中立への移行には膨大な費用がかかる。欧州委の見積もりでは、30年までに1990年比で少なくとも排出量40%を削減する現行目標達成に年間2600億ユーロを追加支出する必要がある。それでも欧州委は削減水準を50%ないし55%に高めたい考えだ。

 今回の投資計画では、脱炭素社会への移行に当たり、EU予算から気候変動への拠出割合を過去最高の25%以上とするほか、欧州投資銀行(EIB)を気候対策銀行に転換し気候関連融資を倍増するなど資金面での支援を裏付けた。また、脱化石燃料の影響を最も受ける地域を支援する「公正な移行メカニズム」を創設し、EU予算や各国政府の協調融資などを資金源とする。

 規制めぐる政争必至

 経済的に裕福ではない国々を中心とする一部加盟国の懸念を和らげるため、欧州委はポーランドなどが求める「公正な移行基金」の設置を約束している。同基金は公正な移行メカニズムの主な構成要素の一つで、EU予算から75億ユーロを確保し、加盟国政府から追加資金を得る。

 グリーンディールの実行には、今後数年で数十の法律を制定、あるいは既存法の改正が必要で、各規制の詳細をめぐる政治的争いになる公算が大きい。

 欧州委のティメルマンス副委員長は「われわれがやっていることは、スペイン北部のアストゥリアスやギリシャの西マケドニア、(ポーランド南西部からチェコ北東部にかけた)シレジア地域の炭坑作業員、アイルランド中心部の泥炭採取者、オイルシェール(油母頁岩)に依存するバルト海沿岸地域などに向けたメッセージだ。あなた方が気候中立に向けて急勾配の道に直面していることは承知している」と強調した。(ブルームバーグ Ewa Krukowska)

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