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「脱炭素経営」企業で本格化、重要な投資の判断材料に 機関投資家が厳しい目線 (1/2ページ)

 【ビジネス解読】

 損益や資産などを開示する企業の財務諸表に、「二酸化炭素(CO2)」の排出状況や削減計画が新項目として義務化される。そんな変化が、数年で現実となるかもしれない。機関投資家らが、環境保全・社会問題・企業統治への取り組みを示す「ESG」が中長期の企業収益を左右するとみなし始め、中でもCO2を明確な評価基準として重視しているからだ。企業側も、「正当」な評価を受けようと準備を進めている。

 「日本のメガバンクがワースト3を独占した!」

 昨年12月にスペインで開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の会場で、こんな報告が参加者たちの注目を集めた。ドイツの非営利法人などによる正式サイドイベントでの発表で、2017年から19年第3四半期の間、火力発電など石炭関連の世界の総融資額1590億ドル(約17兆円)のうち、3メガが計393億ドルで1~3位を占めた。4位は米シティーグループの56億ドルだった。

 イベントに参加した関係者は「主要国の金融機関トップらが集まる中、日本のメガバンクが名指しで厳しく非難された。だが、日本の関係者は他に見当たらず、反論もなかった」と、インパクトが大きかったにもかかわらず“欠席裁判”になっていたと証言する。

 社会課題解決に不可欠

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は18年、世界の平均気温は産業革命前からすでに約1度上昇し、早ければ30年ごろには1.5度に達する見込みで、気温上昇を1.5度に抑えるには、50年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロにする必要があるとしている。そして、このための投資には向こう30年間で最大年間平均3.8兆ドルの巨額投資が必要だとしている。民間資金を投入しなければ達成不能な額であり、金融機関の出番だ。

 日本政策投資銀行産業調査部の竹ケ原啓介部長は、欧米の機関投資家が、08年のリーマン・ショックを反省に、目先の収益力に加えて、それが10年単位でみた将来にも維持出来る会社なのかを投資の判断材料として重視するようになったと指摘する。

 これまでも日本企業は、CSR(企業の社会的責任)報告書などで非財務情報を開示してきた。だが、竹ケ原氏は「悪く見られないためではなく、社会課題の解決と成長をいかに一体化するかという戦略としての非財務情報の公開が主流となってきた」という。

 この流れを受けたESG投資は、12年から14年まで欧州で6割弱、米国で8割弱成長したが、日本では逆に2割減となった。だが、14年に金融庁が、機関投資家の行動原則「日本版スチュワードシップ・コード」の導入を表明。投資先企業の経営に対する考え方を明確にし持続的な成長や企業価値向上を促したことが「転換点となった」と竹ケ原氏はみる。

 15年には、世界最大の機関投資家である、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG重視姿勢を表明し、その流れが一気に加速。日本のESG投資残高は、14年の約9千億円から、15年には30倍の約26兆7千億円、18年には約232兆円に急拡大している。

 ルール策定は手探り

 ただ、何を「ESG」と評価するか、その手法は国際的にも発展途上にある。前述の日本のメガバンクへの評価も、石炭関連ならば内容にかかわらず「ブラウン」部門への融資とみなされ、「グリーン」部門投資と単純比較された結果だ。

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