高論卓説

英のEU離脱が変える世界秩序 「グローバリズム崩壊」現実味 (1/2ページ)

 イギリスのEU(欧州連合)脱退が1月31日にようやく実現した。ジョンソン首相の強力なリーダーシップにより、EU離脱に関わる国論の分裂と政治の混迷から抜け出すことができた。この時期にジョンソン首相が現れたことはイギリスにとって幸運なことであった。(杉山仁)

 イギリスのEU離脱は、ソ連邦崩壊以来の世界秩序を大きく変更するものである。2016年6月の「ブレグジット」を決定した国民投票に続き、同年11月、アメリカではトランプ氏が大統領選に勝利し、米英においてグローバリズムに対するナショナリズムの反撃の動きが明確になった。

 18年に入り、アメリカは対中対決姿勢を明確に打ち出し、いわゆる米中冷戦が始まった。アメリカは戦術の一環として、中国を世界的サプライチェーンから外そうとする動きに出ており、自国企業の中国撤退を促進している。いわゆる中国とのデカップリング政策であるが、今年に入り顕在化した新型肺炎の蔓延(まんえん)が、期せずして外国企業の中国撤退の動きを加速している。

 歴史は、中国を世界の工場として組み込んでいたグローバリズムから、中国を外したナショナリズムに回帰している流れにあると思われる。EUを離脱した後のイギリスはアメリカ、英連邦諸国および日本との政治・経済的結び付きを強化する動きに出ている。日本との関係では両国とも海洋国家で、20世紀初頭の同盟は日本の国際舞台における興隆を促進した。

 一方、第二次世界大戦における日本軍の東南アジア、インドへの進攻が、戦後大英帝国崩壊をもたらした直接の要因であったのも歴史的事実である。日英両国は世界史の大きな出来事を通じ絡み合っており、明治維新以降、両国が世界史の転機を形作ったケースが見られる。従って今回のイギリスによる対日接近も、日本にとっては繁栄の大きなチャンスではなかろうか。

 ロンドン在勤中に痛感したのだが、ロンドンの金融インフラは、米ニューヨークと並び世界で最も充実しているといえる。国際ビジネスの標準語となっている英語を母国語とすること、金融業務を支える弁護士、公認会計士、コンサルタントの厚みと広がり、金融監督当局の厳格な規制と透明性、それに英領バージン諸島などの租税回避地の仕組みを有していることはイギリス金融業の大きな強みだ。ブレグジットに伴い多国籍銀行の拠点は独フランクフルトやアムステルダムに移転する動きがあるが、これらの都市はロンドンと肩を並べるような金融インフラは有していない。

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