高論卓説

英のEU離脱が変える世界秩序 「グローバリズム崩壊」現実味 (2/2ページ)

 もう一つ忘れてはならないのが、イギリスの情報収集力である。20世紀初頭のアラビアのロレンスの時代から、中東に諜報員を配置し、諜報活動を続けている。中東に限ったことではなく、世界中の情報を絶えず収集している。諜報ネットワークの構築には長い時間がかかるが、欧州大陸諸国でイギリスに匹敵する情報収集力を確立できている国はないのではないか。

 EU諸国にとっては、イギリスがこれまで負担してきたEU拠出金約1兆6000億円が失われることに加え、イギリスの強みである金融力、政治力、情報力も利用できなくなる。EUの弱体化という深刻な課題を突き付けられている。またこれまでEU経済の機関車とされていたドイツは、中国経済との結び付きが強かった故、中国経済の不安定化に伴い、経済の減速が著しい。貧しい東欧諸国を抱えるEUは「弱者連合」となり、イギリスのEU離脱は、EU崩壊すなわちグローバリズム崩壊の第一歩となるであろう。

【プロフィル】杉山仁

 すぎやま・ひとし JPリサーチ&コンサルティング顧問。1972年一橋大卒、旧三菱銀行入行。米英勤務11年。海外M&Aと買収後経営に精通する。著書『日本一わかりやすい海外M&A入門』他、M&Aと買収後経営に関する論文執筆と講演多数。経済産業省がまとめた『我が国企業の海外M&A研究会報告書』の作成にも参加している。東京都出身。

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