海外情勢

新型肺炎でだぶつく鋼材、安値で中国から海外流出も

 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大により中国で製造業が低迷し、鋼材の在庫が急増していることが分かった。だぶつきで価格は下落傾向にあり、行き場を失った安い鋼材が海外市場に流れれば、日本の鉄鋼業にも打撃となりそうだ。

 中国鉄鋼工業協会によると、2月上旬の主要都市における鉄筋や鋼板の在庫量は1471万トンと、1月と比べ8割増となった。全体では、昨年末から2倍近くに跳ね上がっている。

 新型肺炎で企業の活動再開が遅れ、需要が減少しているためだ。1月の中国の自動車生産は前年同月比24.6%減と大幅な落ち込みを記録。2月には苦境がさらに拡大するとみられる。一方、各地の製鉄所の高炉は稼働を続け、目立った減産には至っていない。

 ニュースサイトの経済観察網は、在庫増により「3月まで鋼材価格は弱含みが続く」とする専門家の見方を紹介。別の中国メディアも「4月まで価格は大きな圧力を受ける」と指摘した。

 中国の需要低迷は鉄鋼業界全体のバランスも崩しかねない。日本製鉄幹部は「中国の成長が鈍り、鋼材が海外に流出した場合」を懸念。東南アジア市場などで厳しい競争にさらされることに危機感を抱く。

 中国の鉄鋼の過剰生産は世界的な価格下落を招いてきた。近年では生産能力削減に動いているが、2019年の中国の粗鋼生産量は前年比8.3%増と大きく伸びた。(北京 共同)

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