海外情勢

「英国のラスプーチン」政権を揺るがす ジョンソン首相の側近が暗闘 (1/2ページ)

 【ロンドン=板東和正】欧州連合(EU)を離脱した英政治が権力抗争に揺れている。ジョンソン首相による13日の内閣改造は首相の右腕として政策を支えてきたジャビド財務相が辞任した。背景には、首相官邸の「陰の権力者」と呼ばれるジョンソン氏の上級顧問、カミングス氏の存在がある。財務省の掌握を狙うカミングス氏にジャビド氏が反発し、閣外に去る道を選んだとみられている。

 昨年7月のジョンソン氏の首相就任後、本格的な改造は初めて。先月末の欧州連合(EU)離脱直後の人事刷新だった。

 ジョンソン氏は財務相留任の条件としてジャビド氏の顧問解任を求めた。ジャビド氏はジョンソン氏の条件を拒否。記者団に「顧問は非常に懸命に働いており、辞任以外の選択肢はなかった」と打ち明けた。

 英メディアによると、ジョンソン氏に顧問の解任を要求するように迫ったのはカミングス氏だ。大規模な公共事業の実施を訴えるカミングス氏に対し、財政規律を守りたいジャビド氏の顧問との不和が指摘されていた。カミングス氏は、ジャビド氏の辞任後、現在の財務省の顧問を解任し、新たに首相と財務相の下に共同の経済顧問チームを設置するとみられている。

 英政府はジャビド氏の後任として、スナク財務副大臣を昇格させた。スナク氏はジョンソン氏と同じ強硬な離脱派として知られる。英紙フィナンシャル・タイムズは「スナク氏がジョンソン氏のお気に入りであるのは疑いようもない」とした上で、今後、財務省の独立性が損なわれる懸念があると指摘した。

 最大野党・労働党のマクドネル影の財務相はツイッターで「(ジャビド氏が辞めたことで)カミングス氏は明らかに財務省を完全にコントロールする戦いに勝った」と分析した。

 カミングス氏は、ジョンソン氏が首相に就任した昨年7月、政権運営全般に助言する上級顧問に任命された。もともと政治家ではなく、政策を立案する政治ストラテジスト(戦略家)で、EU離脱の是非を問う2016年の国民投票では会員制交流サイト(SNS)を駆使して離脱を訴えるキャンペーンを主導。ジョンソン氏が昨年、強硬離脱に反発する野党の動きを封じ込めるために行った議会の休会措置も裏で指示したとされる。英紙ガーディアンは、カミングス氏をロシア帝政末期に権勢を振るった怪僧に例えて「英国のラスプーチン」と報じた。

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